働き始めたことで症状が表面化
教師になる夢を叶えながらも退職

 26歳の女性は、子どもの頃から、トラブルがあった。ただ、家庭で保護され、充実した大学時代を送り、教員になりたいという夢も実現。卒業後、高校にも教師として就職できた。

 ところが、自分で担任を持つと、だんだん子どもたちが荒れてきて、授業ができなくなった。学校でも配慮して、補助教員を配置してくれたものの、自分は教師として適性がないと考えるようになり、1学期で退職。夏休みは、予備校で働いたものの、校長に怒られて、結局辞めてしまう。

 その後、うつ病の治療を続けることで、日常生活を送れるようになった。ただ、小さいときからの様子を聞くと、集中するのが困難だったり、いろいろなことをオーガナイズすることが下手だったりしたことがわかり、ADHDの評価を受けに来たという。

 高校・大学時代には、まったく目立たなかったのに、大人になって働くようになり、負担が増えたことで事例化してしまったケースだ。

 ADHDの症状が大人に及ぼす影響について、齊藤准教授は、次のように挙げる。

 教育や雇用にかかわるものについては、学業が続けられないことによる退学、本来持っている能力に見合わない職業しか選択できない、遅刻や早退が増える、しばしば期限に間に合わないことなどにより、雇用が不安定になって、雇用を継続していくことが難しくなる――などだ。

 また、社会活動にかかわるものについては、人間関係の構築、すぐにカッとなる、不十分な社会スキル、乏しい金銭感覚による過剰な債務、アルコールや非合法薬物などへの依存といった問題だ。 

 さらに、家族や家庭生活にかかわる問題としても、情緒的なコントロールができず、家庭内でトラブルが起きやすくなる、兄弟げんかが多くなる、世代を超えてADHDがつながっていくということが報告されている。