脳の法則1:脳は情報を掛け合わせる、つまり1足す1は2以上である

 脳には相乗する力(シナジー)があることがわかっている。一つの考えが他の考えの引き金になり、それが次々と他の考えを引き起こしていく。例えば、家に緊急を要する速達が届いたという伝言を職場で受け取ったとしよう。この情報によって、どれだけの異なる考えが引き起こされるだろう。これを、発散思考という。つまりシナジーとは、一つの中心的な考えからスタートして多数の考えに移行していく能力である。

 一方、収束思考(ほとんどのIQテストで測定される)は、例えば取引業者20社のリストから1社を選ぶなど、多くのアイディアから狭めていく能力である。

 創造性が生まれるのは、既存の知識を新しい着想(アイディア)と結びつけて新しい思考パターンが生じる時だ。組織のメンバーが意見や方向性についての見解を交換しあう時に、創造性は自然に生み出される。シナジーは、新しいアイディアや連想が既存の知識基盤に投入された時に創造的思考の飛躍的な進歩に結びつくことを説明している。現場の社員一人一人が非常に重要な構成要因になるのである。

 情報を相乗するという脳の法則を知らないと、ビジネス・セミナーに参加したりビジネス書を読んだりしても「既に知っていることがほとんどだ! 新しいことはあまり学べなかった」と不満を言いがちだ。しかし、シナジーについての知識を適用すれば、その内容の99%に精通していても、残り1%の新しいことが新たな連想と思考のきっかけになり、それが新しいアイディアを次々と生み出すことになる。

 こうした連想は既存の知識の上に構築されて新しいアイディアを生み出し、それがさらに次々と新しいアイディアを生み出す。そのセミナーや本からたった一つでも新しい考えが得られれば、結果的に画期的なアイディアを生み出すこともある。組織のメンバー各人が価値あるアイディアが生まれるきっかけともなり得る。