2008年2月9日に東京で開催されるG7で各国協調利下げの方針が決まるのではないか、との観測がある。金融市場が世界的にさらなる恐慌状態に陥れば別だが、現時点では協調利下げの合意は形成されがたいと思われる。2007年12月12日には、5中央銀行が協調して流動性対策を発表した。しかし、短期金融市場向けの技術的な流動性対策と、金利政策では次元が異なる。

 金利政策に関しては、1980年代のプラザ合意当時と異なって、各国のマクロ経済の事情に沿って判断するというスタンスが中央銀行間でコンセンサスとなっている(経済のグローバル化により、結果的に利下げ・利上げのタイミングが近づくことはありうるが)。また、米国にとっては、今のところはドル安が海外からの観光客の増加や輸出をサポートしているため、他国に強く金利引き下げを要求するフェーズではないだろう。

 ECBはインフレをいまだ懸念している。加盟15ヵ国の見解が利下げでまとまるには、しばらく時間がかかりそうだ(年内数回の利下げの可能性はある)。ECBの条約上の最優先使命は物価の安定である。FRBのように物価安定と雇用最大化の両方を実現せよとは明文化されていない(それがかえって米経済の振幅を激しくしてきたかもしれない)。市場安定策としての利下げはECBには難しい。

 日本銀行に対しては、欧州、アジア、オセアニアなどの中央銀行が日本の低金利が国際マネーフローに弊害を与えていると苦言を呈してきた経緯もあり、国際的な利下げ要求は強くないようだ。それらの国々にしてみれば現在の日銀の政策金利(0.5%)は十分緩和的であり、ほとんどゼロ金利にしか見えない(ニュージーランドは8.25%、オーストラリアは6.75%、韓国は5%、ECBは4%)。サブプライム問題は日本が震源地ではないだけに、日銀が利下げをしても、実際、国際的な効果は弱いだろう。また、日銀が政策金利をゼロ金利に近づけると、海外の主要マネーセンターに比べ遅れている日本の短期金融市場のインフラ整備がさらに遅れてしまう弊害も懸念される。

 中国など新興国の経済も失速すれば、次期日銀総裁(武藤敏郎氏?)が利下げを決断する可能性はある。ただし、福井俊彦総裁の最近の発言から判断すると、日銀は世界経済の不透明感を警戒しつつも、「日本経済の2008年度は潜在成長率(1.5~2%程度)をやや上回る」というシナリオを諦めていない。自民党からゼロ金利政策の復活を求める声が出始めているが、日銀は現行の政策金利を当面維持するだろうと予想する。

(東短リサーチ取締役 加藤 出)