休んでいるときに
「第二の心臓」を鍛える

 なぜこのような独特な商品が開発されたのか? その答えはSKINSブランドのルーツにある。SKINSブランドの生みの親である、ブラッド・ダフィー氏はオーストラリアのスキー選手だった。南半球出身のダフィー氏は、フライトでの長距離遠征による疲労というハンディを克服するために、SKINSの原理を用いたアンダーウェアを開発した。

 特殊なブランドのルーツを持つSKINSには、独自の理論がいくつか存在するが、その徹底ぶりを表す象徴的なエピソードが、ブランドの理論を優先し、敢えて「一般医療機器認定」を取得していないことだ。

 SKINSでは、オーストラリアの研究機関と共同で、運動時・静止時にどのように着圧が変化するかを測定し、身体の末端から心臓に向けて段階的に着圧をかけていく「段階的着圧」理論を確立。アキレス腱や足首周辺の部分は着圧が弱く、“第2の心臓”と呼ばれるふくらはぎを強くし、徐々に心臓へと着圧が弱くなっている。

 しかし、日本で一般医療機器の認定を取得するには、足首の着圧を強めることが求められる。ブランドのルーツにもつながる理論を重視するか、一般医療機器認定という「お墨付き」を重視するか。その決断を迫られたSKINSブランドは、前者を選択した。

 さらに「燃え尽きランナー」の心理を先読みしたかのように、商品開発は細部にまで至る。筋肉の収縮に合わせて着圧を一定にする「メモリーMX」という独自の糸を要所に採用しており、メンズのアキレス腱部分にはより多く用いている。かつての自分を引きずり、意気込んで走ったことが災いしアキレス腱を傷める、という話は、特に男性の燃え尽きランナーには珍しい話ではない。そうしたランナーに配慮し、予めメモリーMXを多く採用するという対策を施している。

 では、なぜここにきて「燃え尽きランナー」「ランニング時には着てはいけない」という新機軸の打ち出しがされるようになったのか? そこには、一見成長市場とも思えるランニング市場への危機感が読み取れる。