いよいよ今年4月から、消費税率が8%に引き上げられる。さらに1年半後には、10%までの引き上げも待っている。激動の時代を生きるビジネスマンは、消費税に関する知識を今から身に着けておかないといけない。消費税に関する用語を、ジャンル別にわかり易く解説した。前回に続き、販促コンサルタントの竹内謙礼氏による「増税前・増税時に関する用語編」をお届けする。

【買いたたき】

 買い手である事業者が、売り手である供給者に対して、合理的な理由なく低く価格を定める行為。例えば「消費税があがっても本体価格100円の商品については、これまでと同じく105円(税込)のままでお願いしますね」という発言は“買いたたき”とみなされて、転嫁措置法の禁止行為とみなされる。なお、対価から事後的に減じて支払うことは「減額」という。

【参考】「公取委、"消費税転嫁拒否"で139社に指導--運送代金据え置きなど強制」(マイナビニュース)

【転嫁カルテル、および表示カルテル】

 通常、事業者などが商品の価格等を共同で取決め、競争を制限する行為(カルテル)は独占禁止法によって禁じられている。しかし、転嫁措置法では事業者が公正取引委員会に届け出さえすれば、これらのカルテルは認められる。これにより消費税の転嫁の方法や表示方法などを業界で統一することができる。

【報復行為】

 売り手側が買いたたき等の禁止行為を行っていることを、公正取引委員会等に対して知らせた理由として、買い手側が取引の数量を減じたり、取引を停止したりして、不利益な扱いをすること。転嫁措置法のもと厳しく禁じられている。

【適用税率】

 商品やサービスを購入した時点で適用される税率のこと。原則、消費税率引き上げ日以降に商品の引き渡しやサービスの提供が行われた場合に新税率が適用される。

【参考】消費税率引上げ対策早わかりハンドブック 11P(東京商工会議所)/PDF資料

【指定日・施行日】

 消費税率が引き上げられる日を「施行日」、施行日の半年前を「指定日」という。経過措置や適用税率を判断するうえで、確認しておくべき日程は、以下の(表1)の通り。

【かけこみ消費】

 消費税増税前に、集中的に消費者が商品を買い込む消費のこと。電通の発表によると、2014年4月1日の消費税増税時には、9兆円の市場規模があると予測している。高額な商品は増税より半年ほど前から消費が動き出すが、低額の商品に関しては、消費税増税の施行日1ヵ月前ぐらい前から動き出す傾向がある。

 特に2014年4月1日の消費税増税の際は、3月21日、22日、23日の3連休、また、2015年10月1日の消費税増税の際は、9月19日~23日のシルバーウィークの5連休にかけこみ消費が高まることが予想される。なお、かけこみ消費によって、急激に消費が発生するために、在庫不足、人材不足が売り場で発生する。特に商品の「まとめ買い」によって宅配や配達サービスの遅延が予想されるので、事業者は事前のトラブル防止策も講じておいたほうがいいだろう。

【かけこみサンデー】

 1989年4月、および1997年4月の消費税増税時には、直前の3月の最終日曜日が「かけこみ消費」のピークを迎えた。これによりマスメディアが、消費税増税前の3月最終日曜日を“かけこみサンデー”と呼び、この日に消費がピークを迎えることを予測している。ちなみに、2014年3月の最終日曜日は3月30日、2015年10月1日の9月の最終日曜日は9月27日となる。

【まとめ買い】

 消費税が増税される前に、保存がきく商品や、時間による劣化がない商品をまとめて消費者が大量購入する行為。麺類や米類、水や調味料などの食品の他、ティッシュペーパーや紙おむつなどが、これらの“まとめ買い”の対象となる。また、売り手側も消費者のまとめ買いを促進させるために、売り場で商品のセット売り、まとめ売りを積極的に展開するのも、消費税増税前の光景と言える。なお、クリーニング券等を綴り販売したり、居酒屋がボトルキープの販促を積極的に展開したりすることも、“まとめ買い”の一環と言える。

【高額商品と低額商品】

 消費税が増税される前に、かけこみ消費が予測される商品は「高額商品」と「低額商品」の2種類に大きく分けられる。高額商品に関しては、消費税の増税分の恩恵が受けやすい。対して低額商品は価格そのものが低いために、まとめ売りをして単価を引き上げなければ、お得感が演出できない。

 ・消費税増税の際に活発に動くことが予想される「高額商品」

 住宅/家具/家電/エアコン/自動車/高級酒/高級時計・宝飾品/高級ブランド品/紳士服・ゴルフ用品/タブレット・パソコン

 ・消費税増税の際に活発に動くことが予想される「低額商品」

 米・麺/乾物・のり/珈琲・缶ジュース・水/ウイスキー・ワイン・焼酎・清酒・ビール/調味料・醤油・ジャム・カレー粉/トイレットペーパー、ティッシュペーパー/歯磨き粉、洗剤、シャンプー/食品包装用ラップ/夏物衣類・靴、肌着・下着/新幹線切符

【ポイントサービス】

 事業者が消費者に対して、特定のカードによってポイントを付与するサービスのこと。消費税増税のタイミングでポイントカードを販促ツールとして活用する事業者は多い。仕掛けは以下の通り。増税前に大量のポイントを付与して会員カードを作らせて、かけこみ消費を促進。増税後は、節約志向が強まった消費者が、溜まったポイントを利用する目的で来店するので、集客動機を促す販促ツールとしても活用される。

 1997年の消費税増税時は、ポイントサービスによって集客数を高めた小売店が多かった。ただし、本体価格か総額のどちらにポイントを適用させるか等、事前に決めなくてはいけないことも多く、導入の際は慎重な対応が求められる。

【ネットショップ】

 インターネットを通じて商品を販売する仮想店舗。1997年の消費税増税時には流通額がほとんどなかったが、2014年の増税時には、3兆円を超えるとも言われるネット流通額が、市場にどのような影響を与えるか未知数である。

 ネット通販は、価格比較のしやすさに加えて、まとめ買いにも適しており、特に重い荷物のまとめ買いに関してはネット需要が高まることが予想される。また、節約志向が強まる増税後は、安い商品を探し求める消費者が増えるので、こちらもネット通販が実店舗よりも有利な立ち位置になるのではないかと推測される。

 なお、24時間営業の仮想店舗のため、「注文時」と「発送時」における消費税の転嫁に関しては、事前にホームページ等で注意事項を明記しておいたほうがいいだろう。

【仮想ショッピングモール】

 ネットショップが集まる電子商店街。楽天市場やヤフーショッピングモール等が代表格。消費税増税時には、検索性やポイントの優位性を生かして、流通額を大きく伸ばすことが予想される。なお、楽天市場、Amazon、ヤフーショッピングは「税込」対応、DeNAショッピングは「税別」の価格表記の対応を発表している(2014年2月時点)。

【バナー】

 インターネット上に表示されるWebサイトの広告やリンクの画像のこと。目立つコンテンツを作り込むことができるので、消費者の目線を引きやすくする販促ツールとしてホームページで多用されている。ただし、増税時の価格表記の変更の際は、画像コンテンツのため、テキストのように簡単に数字を書き換えることができない。

 また、カート機能と紐づけられた価格表記であれば、一括変換で「税込」「税別」に切り替えることができるが、バナーに画像として描かれた価格表記に関しては、一括で表記を変えることができないデメリットを抱えている。画像コンテンツは検索でもヒットしないので、価格表記を切り替える際に見落とす可能性もあるので注意が必要である。

【2014年3月31日(2015年9月30日)】

 消費税増税前の最終日。この日は、日にちをまたぐサービスに関して、さまざまな対応策を講じられている。電車賃、ガス料金、電話料金等の消費税の転嫁に関しては、十分な注意が必要である。余談だが、フジテレビ系のバラエティ番組『笑っていいとも』が最終回である。

【レジスターの変更】

 店頭で会計の際に使用する「レジスター」。メーカーから直接購入したレジスターであれば、メーカーに購入情報が登録されているので、消費税の転嫁に関してのメンテナンスサービスを受けられる。しかし、中古で購入したレジスター、ネット通販で購入したレジスターに関しては、このような消費税増税に対応したメンテナンスサービスを受けられない可能性もあるので、事前にメーカーに問い合わせをしておく必要がある。なお、今後、「軽減税率」が導入された場合、税区分が複数個に分かれるようなことがあれば、現状のレジスターでは対応できないものがあるので注意が必要である。

【参考】

『消費税引き上げ対策早わかりハンドブック』
 東京商工会議所が制作した消費税対策の小冊子。イラスト解説でわかりやすく要点をまとめている。

 ※PDFダウンロード

『消費税の円滑かつ適正な転嫁のために』
 内閣官房、内閣府、公正取引委員会、消費者庁、財務省が共同で制作した消費税対策の小冊子。「消費税引き上げ対策早わかりハンドブック」に比べて、禁止事項が明確に解説されている。

 ※PDFダウンロード

『消費税アップを逆手にとる販促テクニック』
 今回の用語集を制作した、経営コンサルタント竹内謙礼が執筆した消費税増税対策の本。消費税による駆け込み消費や買い控えの対策を分かりやすく解説している。