

それだけではない。カード会社は信用度の低い消費者への貸し出し枠を一斉に削減し始めた。消費者は逃げ場を失った。別のカード会社への乗り換えはできないし、使用中のカードローンの借り増しもできなくなった。もはや高い金利での借入を続けざるを得ない。
悲劇はそれだけに止まらなかった。景気が急速に悪化して失業する人が急増した。家計が苦しくなり、カードローンの返済どころではなくなった。
消費者も困ったが、銀行も困った。クレジットカードによるローンが急速に不良債権化し始めたからだ。1年前には支払が延滞しているローンは全体の5%未満だったが、今年5月には10%を超えて更に増え続けている。サブプライム・ローン、金融商品に続いてクレジットカードも問題化しては、銀行の政府からの支援に対する世論は益々厳しくなる。
この頃から多くの利用者がインターネット上で、クレジットカード会社の横暴ぶりを非難するようになった。極め付きはニューヨークタイムズの記事だった。同紙の金融担当の著名な記者が、「私個人の金融危機」というタイトルで、自分が如何にして借金地獄に陥ったかを赤裸々に告白した。この記事は瞬く間に「最も多く読まれた記事」のランキングNo.1になった。
国会議員も世論に動かされてカード会社の実態調査に乗り出した。そこで筆者も知らないような悪質な手口が次々に明らかになった。例えば、利用者が支払期日までに返済額を小切手で送っても、わざと(?)処理しないで遅延罰金(おおむね3500円程度)を課す。小切手は郵送されるので、何時カード会社に到着したかは利用者には分からない。だから反論できない。
カード会社は遅延したことを理由に金利を大幅に上げた。金利を一気に41%に引き上げたカード会社もあったという。高金利は既存の借入残高すべてに適用されるので、利用者の負担は一気に急増した。クレジットカードの利用限度をオーバーした場合には、超過罰金が課される。これも金利引き上げの理由になる。時にはカードの利用そのものもストップされる。しかも利用者に何の事前通知もなく突然ストップされる。