一党支配に不利益な存在は
人大代表には推薦されず

 第十二届全国人民代表大会二次会議(今回の全人代)には合計2981名の委員(通称“人大代表”)がいる。全人代を国会に例えるならば、2981人の国会議員が名を連ねるということだが、その構成が興味深いので以下紹介したい。

・ 共産党・政府官僚1193人(40.02%)
・ 企業経営陣717人(24.05%)
・ 基層代表(一般国民)203人(6.81%)
・ 軍隊代表268人(8.99%)
・ その他代表600人(20.13%)

 また、2981人の人大代表のうち、女性の占める割合が23%、少数民族(漢族以外)の占める割合が23%、非共産党員が占める割合が28%、大学学士以下の占める割合が48%という具合であり、普通の農民が39人、最年長代表が85歳、最年少が22歳となっている。

「これが国会か?」

 こういうリアクションをとりたくなるような構成と割合ではなかろうか。個人的には、大学を卒業していない“国会議員”の割合が48%に上り、最年少“国会議員”が22歳(共に女性。陳若琳は競泳中国代表で、北京五輪金メダリスト;鉄飛燕は普通の料金所職員で、某事件をきっかけに大衆的に有名になった)という現状に驚きを隠せない。

 この状況から解読できることは、中国共産党指導部はあえて全国各地・各民族・各階級における多種多様な人材を“国会議員”に任命することで、自国民に対して「我々の国会は多様化社会における多様な権益を反映している」と訴えたいということだ。

 中華人民共和国憲法第一章第一条には「中華人民共和国は工人階級(労働者階級とほぼ同義語)が領導し、工農連盟(労働者と農民による連盟)を基礎とする人民民主専政の社会主義国家である。社会主義制度は中華人民共和国の根本的制度であり、如何なる組織や個人も社会主義制度を損なってはならない」とある。

 上記の人大代表構成から共産党指導部が一般の労働者や農民といった所謂“無産階級”を意識し、迎合していることは比較的明確に読み取れるし、一方で、鄧小平などによる改革開放政策を通じて、すでに社会主義市場経済を実施していることから、企業家たちも“人大代表”に組み入れている。

 もちろん、軍人に対する配慮も怠らない。中国共産党にとって軍部の意向を汲みつつ、軍部を自らの支配下に置くことは至上命題であるからだ。共産党幹部にとって、“軍部掌握”はいつの時代も至難の業だ。

 問題は、これらの“人大代表”が中国共産党によって選ばれているという点だ。党のお墨付きや推薦がなければ代表にはなれない。前述した“多様性”もあくまで共産党指導部が渇望する、或いは許容可能な範囲内における産物である。

 共産党政権が「自らの統治過程に不利益をもたらす可能性のある人物」は代表にはなれない。国会議員が国民によって選ばれるのではなく、一党支配体制下における一党の意思に立脚した推薦によって選ばれる。それが全人代に見る中国政治である。