「アベノミクス」では、医療は成長戦略の「一丁目一番地」と位置付けられる一方、高齢化の進展で膨張する医療費・薬剤費を抑制すべく効率化が求められている。そうした環境下、医薬品ヘルスケア業界に投資をする際には、「新薬」「効率性」「評価替え余地」の3つのキーワードがポイントになると考えています。このポイントに照らすと、新薬でアステラス製薬、塩野義製薬、効率性ではエムスリーに注目しています。
近くて遠い巨大セクター
1995年東京大学経済学部卒、2001 年ボストン大学MBA 取得。1996 年より国際証券(現三菱UFJ 証券)にて医薬ヘルスケア業界を担当。2004 年以降は同社米国法人にて米国医薬ヘルスケア分野のリサーチ活動を継続。2006 年7 月メリルリンチ日本証券入社、医薬品・ヘルスケア業界を担当。2009 年より同業界の主担当アナリスト。
「夢の新薬で劇的な延命効果!」などと銘打った雑誌の見出しは巷に溢れています。果たして効果のほどは、と懐疑的になりながらも思わずその雑誌を手に取ってしまう方も、私だけに限らないと思います。医療の分野、特に技術革新は、それだけ私たちの身近な問題であり、特に年齢を重ねるにつれその興味も深く広くなっていきます。
しかし、ひとたび株式投資の対象として医薬ヘルスケア業界をみると、途端に我々との距離の遠さを感じてしまいます。高齢化により国民医療費は現在の40兆円から増加の一途、介護を含めた市場が急拡大することは目に見えています。さらに政府も技術革新を後押ししており、とても有望な産業に見えます。ただ、株式投資は「コンセンサスとの戦い」であり、すでに株価に反映されている(織り込まれている)ことに期待しても、投資成果を上げることはできません。医薬ヘルスケア業界関連株への投資の難しさは、特にこの点の対処にあるのではないでしょうか。
具体的には、有望な新薬があっても、実際それが何千億円も売れるのか、それとも数百億円なのか、そもそも開発が成功する可能性はどのくらいなのか、といったことについて、自分がどう考えるかだけでなく、株式市場がどう考えているのかに「アタリをつける」ことは、なかなか難しいことだと思います。よほど、普段の生活に馴染みの少ない資源株等のほうが、コンセンサスと自分との距離を測りやすいかもしれません。