多様な生き方・暮らし方が可能になった今、どこに住むか、どう暮らすか、誰と暮らすかについて、今こそ考えてみよう。『週末は田舎暮らし』の著者・馬場未織さんと、コミュニティデザイナーの山崎亮さん、東京R不動産の吉里裕也さんが、これからの豊かな暮らし方について語り合った。(2014/3/11代官山 蔦屋書店トークイベントより)
二地域居住は続かない!?
続けるための草刈り問題
馬場 こんばんは。お集まりいただいて、ありがとうございます。今日は偶然にも3年前に東日本大震災が起こった3月11日で、あの時の胸を突き上げる不安を思い出すような1日でした。
震災にかかわらず、私たちも一秒後に死ぬかもしれないというのを前提に生きるのが、「生きる」ということだと思うんですけれども、一日一日を惜しみながら生きるのと同時に、自分の命の長さも超えた未来のことも考えるような動物が人間です。
抽象的な思いをはらみながらも、でも一方で、現実的にはやることが目の前に山積みされていて、そんな中で「どう暮らそう?」とか、「誰と暮らそう?」というようなことを私なりに考えました。その結果、個人的な回答として、田舎暮らしをすること、東京と南房総の二地域で暮らしてみるという人生を選択しています。
そのいきさつや暮らし方については『週末は田舎暮らし』という本に詳しく書きましたが、今日は現実的で具体的な毎日の生活と、「どう生きようか?」「どう暮らそうか?」という、非常に抽象的なものの往復を、山崎亮さん、吉里裕也さんと一緒に話したいと思っています。
1973年生まれ。日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所に勤務。退社後ライターに転向し、建築雑誌やファッション誌などで執筆。私生活では南房総にて週末里山暮らしを実践し、2011年に建築家、農家、造園家らとともに里山活用のNPO法人南房総リパブリックを設立。目下、親子向けの自然体験教室「里山学校」(南房総市)、「洗足カフェ」(目黒区)、三芳つくるハウス(南房総市)を運営中。
山崎さんはみなさん、もうご存知だと思いますが、日々、東奔西走しながら、地域再生に情熱を傾けていらっしゃいます。山崎さんにまず伺いたいのは「どういう暮らしをしているんですか?」ということです(笑)。山崎さんは二地域というより、多拠点生活ですよね。
山崎 そうですね。家に戻るのは1ヵ月のうちの5日くらいだと思います。今日はこれからNHKの「NEWS WEB」の収録があって東京に泊まりますが、明日は長崎に行くので、毎日違うところに移動している感じですね。
馬場 吉里さんは、実は昔からの知り合いで、大学時代に青臭い都市論とかを一緒に話していた仲です。今は「東京R不動産」という不動産仲介のサイトを立ち上げられてすっかり有名になってしまいましたが、吉里さんも東京と房総のいすみ市で二地域居住をなさっていますよね。
吉里 そうですね。ただ、僕はもう挫折組ですよ。最近、あまり行ってないから。今日は悪い例として、いろいろお話できるかなと思って(笑)。最初から夢のないこと言っちゃうのもよくないですけれど、意外とね、行かなくなっちゃうんですよね。
行くとやっぱり良いなあと思うんですけど、実際は行くまでがどうしても億劫になっちゃうんですよ。ジョギングみたいなもので、「やらないと気持ち悪い」という状態になればいいんですけど、2週間とか1ヵ月、間が空いちゃうとペースが乱れちゃって、気がついたら3ヵ月行ってないということに……。
山崎 そういうものなんですね。
吉里 だからね、馬場さんが本で書かれていましたけど、草刈りとか、房総で過ごすための明確な目標があったほうがいいんですよ。
馬場 それ、目標じゃないから(笑)。
吉里 でも、行かざるを得ない状況をつくった方が絶対いいんですよ。