行かないとすぐに草ぼうぼう
でも、自分で刈ると見える景色が変わってくる

山崎 なるほどね。3ヵ月行かないでいると、草ぼうぼうなんですね。

吉里 ぼうぼうです。

馬場 3ヵ月なんてあり得ないですよ。住めなくなっちゃう。

吉里 本当に草ぼうぼう。入り口から入れないですもん。行くと、草刈りだけで終わるんですよ。で、疲れるじゃないですか。それで萎えるんですよね。3年目くらいから、そんな感じで(笑)。

山崎亮(やまざき・りょう) studio-L代表。京都造形芸術大学教授。慶応義塾大学特別招聘教授。1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。著書に『コミュニティデザイン』など多数。

山崎 じゃあ、馬場さんは、なんでそうならなかったの?

馬場 いやぁ、草刈り、楽しくないですか?(笑)生活のリズムとして、朝起きて、暑くなる前に草刈りをする。で、自分の刈った後に道ができている。そうすると開拓されたような状態になっていて、「あぁ、よくやったな」と実感しながら、そこから自分の暮らしをつくっていくような感じってありません?

 ちょっと変な言い方ですけど、エクササイズとか走るためにお金を出す人っているじゃないですか。でも、里山の暮らしの方だと、巧まずしてシェイプアップしますね。体動かして汗かいて絞られるから。しかも、自分が環境の一部になっているし、ある意味、メンタル的にもいい効果があると思います。

吉里 まぁ、そこまでいくと、なんかランナーズハイみたいな感じですね。確かにあるところまでいくと、自然と一体化している感じはある。

馬場 そうそうそう。草と私の区別がつかなくなる。

山崎 つくだろう(笑)。でも、吉里さんは草刈り、続かなかったんですよね。

吉里 うちはですね、土地がメッチャ小さいんですよ。

山崎 だったら、すぐ終わっちゃうのでは?

吉里 いや、割と細かい作業なんですね。デッキの下のところを刈るとか。

馬場 すぐ終わるじゃん(笑)。

吉里 そうは言いますけど、結構大変なんですよ。だから、実は最近は外注しているです。

山崎 え、外注してるんですか。

馬場 金にもの言わせて。そうですか(笑)。

吉里 近所のボランティアのおばあさんとかに、お願いしてるんですよ。

馬場 でも、草刈りは確かに大変ですよ。私も、やり切れないところは一緒にやっていただく方がいます。それは本当にありがたいです。でもね、本にも書いたんだけど、自分でやると風景が違って見えるんですよ。きれいに刈られている、ごく普通の田園風景が「ご苦労様です!」って感じになるんですね。

山崎 自分でやると、見えている風景の意味がわかるからね。

馬場 そう。見えているものの価値が変わってくるんですよ。漫然と見なくなるんですよ。何気ない風景を見ても、「これ、おばあさんたちがやったんだよね。本当にご苦労様。きれいに刈られてるなあ」と思い入れをもって見るようになるんです。