上田 さて、実りの秋ということで、新米や野菜が食卓を賑わせているなか、日本の食料自給率の低さや輸入食品も含めた「食の安全」の問題が取り沙汰されています。
そこで今回は、日本の農業について考えましょう。やはり農産物は安い国から輸入する方がいいんでしょうか?
竹中 それはもうケース・バイ・ケース。私は日本のコメや農産物はすごくおいしいと思いますが、小麦、じゃがいも、トウモロコシなどは、やはり輸入に頼らざるを得ないのが現状ですね。
しかし、今の日本にとって、実はそれが大きな問題。今後は国内でもっと農産物を作って、自給率の低さを解消するべきだと思っています。
現在、農家は「小規模の家族型経営」が主流ですが、国際競争力をつけるためには、大規模に農業を展開する「起業家」の登場が必要不可欠なんです。
戦前の「小作人制度」や戦後の「農地改革」などを経て、日本の農政は現在に至るまで複雑で保守的です。しかし、農業を守りたいからこそ、グローバル化に耐えられるようにしなくてはなりません。
上田 なるほど。それでは、そんな日本の食糧事情を見てみましょう。日本の食糧自給率は、1960年代に80%もありましたが、その後落ち込み続け、2007年度には40%まで低下しました。
竹中 自給率は、あくまでも生産と消費のバランスで決まります。たとえば、国内で消費する目的だけでなく、輸出をする目的でコメの生産量を増やしても、自給率は上がるんです。
実際、自給率の高い国も、得意な農産物を輸出して自給率を上げている側面もある。だから日本も、世界的に「おいしい」と評判のコメをもっと輸出すれば、自給率は上がって行くでしょう。