先に紹介したクリステンセンのアプローチは、こうした限界を打破するために、顧客の属性ではなく、顧客が抱える「用事」に着目すべき、ということを提唱したものである。顧客はそれぞれ片付けるべき用事を抱えている。朝から寝るまで、「用事」の連続だ。そして、その用事をより効率的、効果的に片付けるために、何かを「雇う」という行為をする。腹を満たす、という「用事」のために、コンビニのおにぎりを「雇い」、移動中に客先情報を仕入れる、という「用事」のために、スマートフォン上の情報サイトを「雇う」。そのようなイメージだ。

 そこには、顧客が意識するような明確な「ニーズ」は存在しない。とにかく無意識のうちに「用事」が発生し、そして無意識のうちに「用事」を片付けるために何かを「雇って」いるだけである。そして、多くの場合は、「そういうものだ」と当たり前に思い、何の疑問も思わない。

 したがって、我々がもし何らかの新たな仕掛けを考えるのであれば、何かのきっかけで表面的に出てくる「ニーズ」を待つのではなく、その裏側で日常的に行われている「用事」を見出す、ということを行うべきである、ということだ。そして、もしその「用事」を感度よく見出すことができれば、その用事を片付けるために「雇って」もらえるのだ。

 これが”Jobs to be Done”の考え方である。それほど新しい概念ではなく、極めて当たり前のことではあるが、無意識のうちに「顧客」の「ニーズ」ばかりに注目してしまう状況に対して、新鮮な気付きを与えてくれるアプローチだと思う。

絵本ナビが片付ける「用事」

絵本ナビ・金柿秀幸社長

 絵本ナビに話を戻したい。では、彼らが片付けている用事とは何だろうか?

 小さな子供を持つ親にとって、幼児とコミュニケーションを図ること、そしてそれを通じて知育教育する、ということは重要な片付けるべき用事である。そして、そのために適切な絵本を手軽に選ぶ、ということも用事の一つである。しかし、その用事を片付けるために雇われるものは、近所の本屋でのディスプレイくらいしかない。その用事に着目して、適切なソリューションを提示したのが絵本ナビである。

 ここで改めて絵本ナビが提供しているソリューションを見てみよう。