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スマートフォンの理想と現実

モバイルの高度化は構想から実現、普及へ
いよいよ動き出した産業の地殻変動

――モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2014レポート【後編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第60回】 2014年4月10日
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 ただ、らくらくスマートフォンに搭載されているデバイスを始め、彼らの有するデバイスには注目すべきものが少なくない。タッチパネルを押すと振動して、深く指を押し込まれたような印象を与える技術など、ハードウェアレベルでのUI/UX技術は、多くの企業が持っているわけではない。

 そう考えると、MWCにおける彼らの本当の狙いは、らくらくスマートフォンという製品そのものではなく、同機で採用しているような要素技術の売り込み、なのではないか。実際それらは、最終製品という形でパッケージングしないと理解しづらく、逆に製品になっていれば、一目見てその意味や良さが分かる。

京セラのTorque Photo by Tatsuya Kurosaka

 同じことは京セラにも言える。新型スマートフォン「Torque」を水没状態で稼動させるなど、興味深い展示を行ってはいたが、最終製品の販売面から見たら効果は見えない。しかし、それこそサムスン電子のギャラクシーシリーズでさえも防水機能が弱かったように、こうした要素技術は日本企業に一日の長がある。

 高い技術力を駆使して、高付加価値の「下請け」を担う――こうした事業形態は、スマートフォンでは顕著になりつつある。有名なのはiPhoneの製造を担うフォックスコンだが、最近ではアルカテルも通信機器ベンダーとしてだけではなく端末製造の下請けが大きな事業となっている。そしてそのアルカテルも、製造技術のアピールを含め、自社ブランドでも最終製品を製造している。

アルカテルのスマートフォン Photo by Tatsuya Kurosaka

 確かに、スマートフォンの雌雄が決しつつある中、グローバルブランドを今から作っていくのは至難の業である。そこで勝ち目のない競争に身を投じるよりも、ソニーのように特定市場でのシェアを目指して生産規模と付加価値のバランスを目指すか、あるいは要素技術やパッケージング技術をグローバルに売っていく方が、メーカーとしては正しい戦略なのかもしれない。

ザッカーバーグ大いに語る

 今年のMWCで注目された大きなポイントが、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOの基調講演だった。いわゆる上位層(OTT)事業者が、下位層(通信事業者や通信機器ベンダー)の祭典であるMWCに来て基調講演をするというのは、それ自体なかなかスリリングなイベントである。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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