税率が10%から一挙に2倍に上がると、投資意欲が減退して、株式市場の売買が大きく落ち込むことが懸念された。そこで、一種の激変緩和措置として、一定の期間に限定して、少額の投資に係る利益に対して税を免除する措置を政策当局が考えた。

 すでに英国で導入されていたISA(Individual Savings Account)をモデルに制度を考案した。英国ではこの制度はかなり定着しており、導入によって20兆円規模の資金が市場に流入したと言われている。

 わが国当局はそれに飛びついた。時限立法の軽減税率を廃止して税収を増やせる上に、その一部を一定期間還元することで、個人投資家の投資意欲を高められるかもしれない。それは、増税の目先を変えるための格好のアリバイ作りと映ったのだろう。

 ただ、英国のISAが、株式や投資信託の他、公社債、保険、さらには預金やMMFなどに非課税の範囲を多くの金融商品に広げているのに対し、わが国のNISAでは、上場株式、公募株式投信、上場投信(ETF)、上場不動産投信(REIT)に限定して、税収が大きく落ち込まないように配慮してある。

損失が出ているのに税金がかかるケースも

 NISA導入の説明を聞いた時に感じたことは、この制度は政策当局が投資増税に対する“アメ”を与えてくれるのだということだ。単なる“アメ”であれば、必ずしも使い勝手が悪いことは重大な問題ではないと納得がいった。その印象は今でもあまり変わらない。

 NISAの最も重要なメリットは、100万円の投資によって、向こう5年間に手にすることができる配当や売買益に税金が掛からないということだ。通常であれば20%の税金がかかるところを、NISA口座を使えば、その税金を払わないで済む。それは、投資家にとっては有難いメリットだ。

 一方、NISAは一人一口座で、基本的に、特定の金融機関に開設した口座を他機関に変えることはできない。また、当該口座を使って購入した株式などを売却すると、それで一旦、NISA口座は終了になってしまう。しかも、売却した分だけ非課税枠が増えるわけではなく、毎年元本100万円が上限となっている。つまり、実質的に売買を繰り返すことができない。