

たとえば、ジェットブルーが昨年末JFK空港に新設した専用ターミナル5をのぞいてみよう。ここにあるのは、有名シェフの店も含めた22のレストランやカフェだ。アメリカの空港の食べ物と言えば、ハンバーガーやピザと相場が決まっているが、ジェットブルーのターミナル5ではスペイン風タパスから、ポリネシア風料理や寿司、ステーキと盛りだくさんである。
また小売店鋪は、本屋のボーダーズ、眼鏡フレーム・ショップ、アメリカで人気の無印良品、マッサージやフェイシャルのスパなどが並んでいる。ちょっとしたショッピングセンターだ。
機内サービスも忘れてはならない。ジェットブルーの飛行機は座席が革張り。座席ひとつひとつにテレビモニターが備え付けられ、生の衛星放送が36チャンネルも見られる。音楽は、衛星ラジオで100局から選曲できる。加えて現在、機内無線ネットワークも配備中だ。これが全部無料である。そしてスナックも食べ放題のおまけつきだ。
一方、他のアメリカの航空会社は、旅客減に伴い収入が減少する中で、サービスをひとつずつ削っているのが実情だ。食事を有料化し、おつまみまでカットしてしまったところは少なくない。
ジェットブルーは、格安航空会社のサウスウェストの出身者が中心となって設立した。ニューヨークJFK空港を拠点とするが、最初から主要都市へ飛行機を飛ばしていたわけではない。たとえば、サンフランシスコ地域も最近までは郊外のオークランド空港にしか飛んでいなかった。
だが、人気上昇を背景に、サンフランシスコ空港での“離着陸権”も得て、今秋からはメジャー航空会社と本格的な競合状態に入る。また最近になって、ドイツのルフトハンザ航空とのコードシェア計画も発表された。今後は欧州でもジェットブルーの名がとどろくことになろう。
ただし、すべてがスムーズに行っているわけではない。2年前のバレンタインデーには、スケジュールの遅延が影響して、機内で搭乗客が10時間も待たされるというハプニングが起こり、苦情が殺到した。だがジェットブルーは、1週間のうちに他の航空会社に先駆けた「旅客の人権保障」を発表、遅延にまつわる弁償制度を明らかにして、イメージ挽回に務めた。
もたつくメジャーエアラインを尻目に、ジェット・ブルーは軽やかなイメージとスピード感溢れる経営でアメリカ航空業界の新たな牽引力となりつつある。