6年後に開催される東京五輪において、「オリンピック特需」の恩恵を受ける業界として真っ先に名前の挙がる建設業界。民主党政権時に公共事業の削減と景気停滞のダブルパンチで建設投資額がバブル時代の約半分にまで落ち込んだが、現在は徐々に回復の兆しを見せている。震災復興事業に加えて、今後予定されている国土強靭化計画やオリンピック施設の整備、さらには民間の建設投資も活気を見せており、一見すると業界は再上昇しているようにも思える。しかし、ヒト不足や建設資材の高騰もあり、作っても儲けが出ない現状にも直面している(粗利率はわずか数%)。五輪は実際に建設業界にとっての起爆剤となるのだろうか。

度重なる入札不調の背景にある
資材価格の高騰と人手不足

都内では建設需要が増えている Photo by Hirofumi Nakano

 現在、年間建設投資額は約50兆円とされている。バブル時代と比較すれば、その額は大幅に減少しているものの、2010年の42兆円を底にして、再び上昇傾向にある。

 日本建設連合協会の山本徳治常務執行役は、震災の復興を目的とした公共事業が大きなポイントになったと前置きしたうえで、民間の工事も増加傾向にあると語る。

「年間建設投資額はバブル時代には約84兆円あったが、バブル崩壊後にその額は下降線をたどり続けた。公共事業の削減も相次いで行われ、停滞する景気の影響で民間の仕事も減少。下がり続ける建設投資額が底をついたのは2010年のことで、翌年に発生した東日本大震災の復興関連事業で建設投資額が大幅に増加した。2013年の建設投資額は約50兆円程度になるだろうと考えられている。2012年から約5兆円の増加となっているが、これは公共事業だけではなく、景気の回復によって民間による再開発なども活発になり始めた結果だ」

 建設投資額の増加は、それだけ多くの工事案件を生み出すことになるが、建設投資額が底をついた2010年頃から多くの技能労働者が廃業や転職を行ったため、ここに来て需要と供給のアンバランスさが露呈。十分な数の「職人」を集められずに、工事そのものに着手できないという事例も発生している。

 人に関する需要と供給のアンバランスの結果、人件費は高騰。さらに、景気回復に寄る工事需要の増加や円安などの要因が重なり、資材の高騰も顕著だ。こうした現状が生み出すのが「入札不調」である。