消費税率が8%へと引き上げられたにもかかわらず、従来から言われていた「益税」の問題が、マスコミなどで取り上げられる機会がめっきり少なくなった。しかし「益税」を生む制度は残っており、その金額も増加する。そこで、そうした「益税」を生む制度の適用範囲を縮小していくことが消費税制度の信頼を高めることになる。与党・財務省のさらなる努力を期待したい。

なぜ簡易課税制度で
益税が発生するのか

「益税」とは消費者から預かった消費税の一部が事業者の手元に残ることを言う。現在「益税」という問題を明確に生じさせているのは、簡易課税税制度免税事業者制度という2つの消費税制度である。

 簡易課税制度というのは、2年前の年間課税売上高が5000万円以下の事業者について適用される制度で、法令で定められた「みなし仕入率」を使って売上税額から仕入税額を計算し、それをもとに消費税額を納税する制度である。

 この制度は、消費税の本則計算に伴う中小事業者の事務負担に配慮する観点から、簡素な方式による納税額の計算を認める趣旨で設けられたもので、業種ごとに「みなし仕入率」が設定されている。

 法令で定められている「みなし仕入率」は、以下のとおりである。

 第1種事業(卸売業)    90%
 第2種事業(小売業)    80%
 第3種事業(製造業等)   70%
 第4種事業(その他)    60%
 第5種事業(サービス業等) 50%

 これに対して、会計検査院から、実際の課税仕入率とのかい離が大きい業種があるとの指摘を受けた。つまり、実際の仕入率に比べて多い割合で「みなし仕入率」が決められており、そこに「益税」が発生している業種があるという指摘である。