ゴールデンウィークなど大型連休は長旅しない主義を貫いている。留学生時代に何度も大型連休を利用して旅に出たのに、深刻な渋滞に巻き込まれ、散々な目に遭ってきた学習効果だ。

 普段は雑事に追われ、自分の時間もあまりないため、ついつい体を使い過ぎる傾向に陥る。だから、大型連休はひたすらその疲れ切った体を休めることに専念する。そして家族を都内のどこかに連れていって食事を楽しんだり、あるいは天気などと相談しながら、日帰りの小旅行に出かける。これが私の大型連休の過ごし方だ。

 しかし、SNSとなると、新しい悩みが出てくる。facebookなどになにを書けばいいのか、という新しい問題に付き纏われる。旅行に出た友人たちはまず渋滞ぶりを嘆く。そしてようやく目的地に辿りついてからの喜びようを描く。こうしたコンテンツと差別化して、自分らしさをどう打ち出せるのかを考え込んだ。

郷愁を一身に集めるB級グルメの王

 そこで5月1日に、facebookに、中華風揚げパンと訳されることが多い中国菓子の「油条」を次のように取り上げた。

「多くの中国人の郷愁を一身に集めたB級グルメの王。今日も食べたいと思う。時々はそれは食欲なのか、故郷に寄せる思いなのか、見分けられない。 油条を作れる名人がいらっしゃれば、すぐにもその食事会を開きたいと思うほどだ。望郷の念を馳せながら、今日も油条が食べたい」

 数枚の写真を添えての発表だけだったのに、あっという間に数百の「いいね!」を押され、40件近くのコメントを書かれた。これらの文字と写真を目の当たりにしただけで、故郷への思いで目が潤(うる)んだ読者も出たようで、郷愁を巻き起こした責任を取れといった冗談も書かかれた。油条を売っている店関連の情報を教える書き込みも数件あった。そうしたら「東京に(油条を作る)美味しい店があれば、今夜中にも新幹線で東京に移動して明日の朝に食べに駆けつけたい」と、果敢な発言をする関西の読者もいる。

 中国に滞在した経験をもつ日本人サラリーマンたちも自らの体験談を披露している。

 たとえば、「ぼくは新疆ウイグル自治区には、1995年以降4度訪問しましたが、ほぼ毎朝、油条と豆乳、時には小籠包か饅頭を添えて、朝食としていました。安くて、しかも美味しい! 因みに油条と豆乳合せて3元(現在、1元は約16円)でした」

「毎朝、小区(団地)の門口で豆乳と一緒に売っていたのを思い出します。記憶が風化してしまいましたが、90年代には確か5毛(0.1元)で買えたのでは?非典型肺炎が流行していた頃(2003年)、自転車で通勤途中のOLがマスクを耳に引っ掛けて油条を(頬張っていた)」

 といった具合だ。