それは、タクシン氏やインラック氏、その姉ヤオワパー氏を筆頭としたシナワット家による政治関与であり、より一般化すれば“政治とカネ”の問題である。

 新興財閥を成長させたタクシン氏は、旧来型利権がビジネスや経済発展を阻害しており、強い指導力による改革が必要と主張して人気を集めた。しかし政権の長期化に伴い、タクシン氏の身内びいきや汚職疑惑への批判も広がっていく。タクシン氏は既存利権の破壊者であると同時に、新たな利権の創造者でもあったのだ。つまりタクシン氏の登場以降、利権をめぐるプレーヤーの組み替えが起こり、その過程でシナワット家と旧来勢力の間で対立が生じた。これがタイの政治対立の本質だ。

首相失職で混迷深めるタイ <br />根深い“政治とカネ”の問題反タクシン派デモ隊はタクシン・レジーム一掃を要求(右)。カネで雇われた隊員も(左)
Photo by Takashi Kawabata

 タクシン政権後に反タクシン派が政権に就いたのは、クーデターによる暫定政権と「棚ぼた」式の民主党政権だけであり、どちらも選挙を経ていない(表参照)。