前回は、給与を決めるためのしくみである等級制度に2種類ある(職能等級or職務等級)ことや、給与改定のしくみについて紹介した。今回は、これまで日本で広く使われてきた職能等級をベースにした能力による給与決定が変革期を迎えていることについて考えてみよう。

あなたは今の会社に
いつまで勤めますか?

 終身雇用と年功序列は日本の雇用慣行として世界でも広く知られてきた。1990年頃までは欧米企業の日本法人でも「日本は特別な雇用慣行があるから」と日本的な雇用慣行を尊重していた企業も多かった。しかし、今このコラムを読んでくださっている方々のどれだけが、「これからも終身雇用と年功序列が続く」と考えているだろうか。

 日本企業がある日、海外企業に買収されて外資系企業になる。気がついたら社長が日本人でなかった会社や、社長は日本人でもGE(ゼネラルエレクトリック)などグローバル企業の最先端でマネジメント経験を積んだ方がトップになる会社もある。

 他国に比べて民族的に多様性が乏しい日本で育った私たちは、こういった環境の変化に追いついているだろうか。日本人にとっての常識は、世界の常識とは限らない。ビジネス環境の変化に対して給与制度や人事制度も変わっていく。現在、その変化を企業に求める2つの要素が、「ビジネスのグローバル化」と「日本国内の少子高齢化」だ。

タイの日系企業で
現地社員が定着しないわけは?

 まず、ビジネスのグローバル化はあなたにとってどのくらい身近だろうか。あなたの会社の海外売上比率を確認してみてほしい。自動車、電機、機械、化学など、20年以上も前から海外売上比率が高い企業は多いと思うが、20年前は海外とは縁遠いと思われたような業界でも海外売上比率は年々高まっている。

 最近では病院、高速道路、鉄道、浄水などの技術・サービスも海外進出している。人口が減少する日本国内市場には成長を見込めないから当然である。グローバルのビジネスなんて自分とは関係ないと思っていても、意外とそうではないのである。

 では、皆さんの会社で海外に事業所があるという方は、現地の社長や人事がどんな悩みを抱えているか想像してみていただきたい。

 日本と同じように考えていたらうまくいかないことだらけだ。日本では、一定レベルの教育を受けた日本人を新卒採用し、会社に入ってから育成、長期雇用を前提に処遇してきている。この前提がまず海外では崩れる。人種、教育レベルも日本に比べて多様になるし、この会社で定年まで働こうと思って入社してきている人は少ない。1つの例をご紹介しよう。