企業改革に伴う抵抗や落とし穴などの生々しい実態をリアルに描いたビジネス小説『戦略参謀――経営プロフェッショナルの教科書』。これまで8回にわたり第1章のストーリーを紹介してきました。残り2回の連載では、第1章の解説パートをご紹介致します。

企業の盛衰はどうして起きるのか?

 企業には、歴史における国家と同様、規模の大小にかかわらず、必ずその盛衰があります。米国のフォードやGMクラスのような、名実ともに世界最高水準の規模とレベルにあった企業でも、企業としての存続が問われる状態になることもあります。

 規模が大きく、世界中からも注目されている企業の場合、凋落の原因追究、つまり「失敗の本質」を解明する記事や論文などが出ます。

  多くの場合、その解説は、戦略的な判断のミスに帰着しますが、果たして戦略論を主軸にして語るのが適切なのでしょうか?

「戦略は実践されて、はじめて価値がある」

 この言葉に異を唱える人はいないでしょう。

 成功した企業が、戦略的に正しい方向性を示していたのはまちがいありませんが、実際に成否を分けたのは、1. その戦略的な方向性に沿った実践力と、2. 素早く的確な方向修正能力の二つだといえます。

 最初の成長期のあと、そのまま衰退していってしまう会社が多い一方で、第2、第3の成長を実現し、結果として、成長を持続できている会社も少なくありません。

 この違いはどこにあるのでしょうか?ここではまず、企業の盛衰はどう起きるのかから考えてみましょう。