日本の株式市場がさえない。株価はウクライナ情勢や中国経済を気にして一進一退を続け、出来高も薄く盛り上がりに欠ける。
最大の要因は、日本銀行による追加金融緩和期待の後退だろう。3月か4月の緩和を期待していた向きが失望に転じ、次いで期待の高かった7月についても可能性が後退したとみられている。ウクライナ情勢の悪化による質への逃避とともに、円安期待を円高懸念へと転換させてしまった。
しかし、金融緩和期待の後退はデフレ脱却期待の高まりと裏返しでもある。デフレ脱却は、短期的な株価上昇要因にはなりにくいが、中長期的な株価上昇のためには最も求められているものである。今後、日本の株式市場が本格上昇に移るためには、金融緩和という目先のイベントではなく、デフレ脱却という大きなストーリーを評価するマーケットに変化する必要があろう。
短期筋の外国人買いが減少したことを憂う必要はなく、長期筋の外国人買いが戻りつつあることに注目すべきである。つまり、イベントドリブンで先物・インデックスを短期売買するヘッジファンドなどによる日本株買いは減少した。一方、現物・個別株を長期保有する年金・投資信託などが静かに日本株を買い進めているのだ。
百貨店の売上高などからは、消費増税の悪影響が想定以上に早く薄れ始めたことが示されている。しかし、消費の強さが金融緩和期待の後退を通じて株安材料になるという市場の反応は、明らかにおかしい。株高材料となってしかるべきである。日本の投資家も、金融緩和や景気対策などの短期的な材料ではなく、一部の外国人投資家のように大きなストーリーで投資を行う姿勢に転換する必要があるだろう。
日本政府も株高を演出したいのであれば、より長期的な施策を進める必要があろう。景気が悪かったときは、潜在成長率並みかそれを上回る成長率へと押し上げる短期的な施策が必要であった。しかし、景気が回復した今、潜在成長率自体を引き上げる長期的な施策が必要だろう。税制改革や規制緩和である。