「山善製、扇風機、2480円」「オリオン電機製、32型ハイビジョン液晶テレビ、3万1230円」「シー・シー・ピー製、ロボット掃除機、1万1980円」(いずれも税抜)……。5月半ば、渋谷の大手家電量販店をのぞくと、店頭の最も目立つ売り場に、衝撃的な安さの商品が並んでいた。ポイントサービスがあるので実際はもっと安くなる。製造元は聞きなれない社名かも知れないが、いずれもれっきとした日本の家電メーカーだ。

「安くてもスゴイ!ジェネリック家電の世界」の著者・近兼拓史氏。"安かろう悪かろう"という常識は、良い意味で裏切られる

 人呼んで「ジェネリック家電」――山善やオリオン電機、シー・シー・ピーが市場に供給する家電はそう呼ばれている。ひと言でいえば、安くて高品質なノーブランド家電の総称だ。名付け親は、国内外の家電事情に詳しく、『安くてもスゴイ!ジェネリック家電の世界』(集英社)の著者でもある近兼拓史氏。先に開発されたクスリの有効成分の特許が切れたために、安い価格で製造・販売されるジェネリック医薬品にあやかり、命名した。

激安の秘訣は「単純な機能」と「成熟技術」

 なぜ、これほどの激安が実現できるのか。まず言えるのは、単純な機能のみに徹しているということだ。例えば山善の扇風機は強・中・弱の切り替えと首振り機能、タイマー機能、高さの伸縮機能など基本性能のみ。今どきの最先端扇風機が備えるリモコンや消音機能、チャイルドロックなどは搭載していない。オリオンの液晶テレビもブルーレイレコーダーは内蔵していないし、内蔵チューナーは地デジのみで、フルHD表示でもない。どちらも不要な高機能をそぎ落としているのがミソだ。

 高価な最先端技術を使わず、成熟技術、汎用部品を使っていることもポイントだ。近兼氏はこう解説する。「先端技術といえるのは、目安として登場後3年以内。一方で、ジェネリック家電が用いているのは、主に3年以上前の技術や部品。それらの取引価格は下落しているので本体も安く作れる。ただ、3年前の技術でも十分に高水準。テレビも32インチクラスなら画質に大きな影響はない」。