今回は、2014年5月16年に開催された、社保審・生活保護基準部会についてレポートする。基準部会では3月以来、生活保護制度のうち住宅扶助に関する議論が続いている。人間の生活の根幹である「住」、都市圏で家賃相場を形成する大きな要因ともなっている住宅扶助基準は、現在、どのように議論されているだろうか?

「住宅扶助削減」方針の財務省と「だから削減」の厚労省
部会委員たちはどう考える?

 5月16日に開催された、厚労省社会保障審議会・第17回生活保護基準部会。本稿執筆時点では、まだ議事録はアップロードされていないが、配布された資料はダウンロードできる(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000045980.html)。

 基準部会では、3月4日に開催された第16回より、住宅扶助に関する問題が議論されている。第17回に引き続き、5月30日に開催される予定の第18回でも住宅扶助について議論が行われる予定となっている。第17回・第18回とも、筆者は抽選に当たり、傍聴できることとなった。

「立て続けに」という感じで住宅扶助が議論される背景については、財務省の「削減したい」という方針に合わせて「削減する」という結論を出したい厚労省の意図があると見られている。この財務省方針の方向性は、2012年11月、「新仕分け」で明らかにされている(政策ウォッチ編・第3回参照)。当時、主に話題にされていたのは生活保護費のうち生活扶助であったが、「新仕分け」では住宅扶助などその他の扶助についても議論が行われた。

 5月16日の基準部会の冒頭では、通例通り、厚労省側から住宅扶助に関する作成資料の説明が行われた。資料は主に、住宅扶助の見直し(≒引き下げ)の必要性を示唆するデータと、これから行われる予定である生活保護世帯の居住実態調査に関するものであった。

 引き続き、部会委員たちによる議論が開始された。議論開始直後、委員の山田篤裕氏(慶応義塾大学教授・経済学)は、厚労省作成資料に対して、

「一般低所得世帯に比べて生活保護の住宅扶助基準が2割高いというこのグラフは、ミスリーディングではないかと思います。平均値と上限値を比べています。意図的ではないかと」

 と指摘した(委員発言は筆者のメモによる。以下同じ)。

 本ページのグラフは、山田氏が「ミスリーディング」と指摘したものである。全国でみると、2人以上世帯の場合、生活保護基準額の家賃は4.6万円。一般低所得世帯の家賃実態は3.8万円。深く考えずに眺めると「生活保護の方が2割高い家賃の賃貸住宅に住んでいる」と読めてしまうグラフだ。

 ちなみにこのグラフは、3月28日の財務省・財政制度分科会で配布された資料がそのまま引用されたものである(もちろん、厚労省の配布資料には「《参考》財政制度等審議会(平成26年3月28日開催)資料」と注記されている)。筆者はこの財政制度分科会の議事録も確認してみたが、ここでは住宅扶助については特に議論は行われず、「削減すべき」という結論にも至っていない。