3月24日、国土交通省は今年1月1日現在の公示地価を発表した。それによると、昨年1年間で、全国平均の住宅地で1.3%、商業地で3.8%、全用途で1.7%と2年連続の上昇となった。特に、大都市圏の商業地の価格上昇傾向が顕著になっており、東京圏商業地の上昇率は2006年の9.4%から12.2%へとなった。また、上昇率ナンバーワンは仙台駅前の40.1%で、全国の上昇率ベストテンの半数を、仙台や福岡の繁華街が占めたことも注目される。
ただ、もう1つ見逃せないポイントは、昨年の前半に上昇した地価が、後半になるとピークを打って、むしろ下落傾向を示したことだ。この背景には、米国のサブプライム問題表面化などによる、世界的な不動産バブル崩壊が影響していると考えられる。
REITがもたらした
世界的な不動産バブル
不動産の専門家と話していると、つい最近まで、米国や欧州、わが国など世界的に不動産価格が上昇傾向を示していたことがよく分かる。米国では、90年代の株式バブルを引き継ぐ格好で、2000年代の初頭以降不動産が上昇し始めた。その傾向は欧州地域でも見られる。英国やスペイン、さらにはフランスでも不動産価格の上昇が顕著になった。特に、英国などの不動産上昇の幅は、米国のそれを大きく上回るといわれており、一部の専門家は「欧州でも、間違いなく不動産バブルが発生している」と指摘している。
そうした不動産価格上昇の背景には、不動産ファンドやREIT(REAL ESTATE INVESTMENT TRUST = 不動産投信)などが重要な役割を果たした。それらは、常に、収益を求めて不動産の投資案件を探しており、不動産市場に隠れている有利な投資案件を掘り起こす機能を果たした。
また、それらが潤沢な資金を不動産市場に呼び込んだことも見逃せない。不動産ファンドやREITはいくつかの不動産案件をまとめ、それを証券化などによって、いくつかに分割して投資家に販売する手法をとる。そのため、小口の投資資金でも、不動産市場の上昇を享受できる金融商品を購入することが可能になる。それは、相対的に小額の投資資金しか持たない個人投資家には大きな福音だ。
また、REITの場合は、取引所に上場されていることが多いため、投資家は、好きなときに売却することも可能になる。そうした仕組みを通して、潤沢な資金の一部が、各国の不動産市場に流れ込み、価格を押し上げる役目を果たした。そして、そうした傾向を見た人々が、居宅用や投資用の不動産購入に走ったことが、世界的に不動産価格を押し上げ、一部の国や地域では、理論的に正当化できないほど価格を上昇させ、不動産バブルを作り上げたのである。
そもそも不動産に限らず、ものの値段は、それを購入することによって得られる効用=メリットがどれだけあるかによって決まる。個人が購入する住宅の場合、同じような不動産を借りるときの家賃を払い続ける出費と、不動産を購入するときの価格を比較して、両者が均衡する価格が、理論的な価値=フェアーバリューということが出来る。
一方、商業用不動産の場合は、その不動産を購入して、そこから得られる将来に亘っての収益を現在の価値に引き直した価格がフェアーバリューということが出来る。こうした考え方を収益還元法と呼ぶ。