マンション価格上昇と地価回復で好調維持の不動産市場、25年下半期の「2つのリスク」Photo:PIXTA

日本の不動産市場の状況
明確に強まった先行き不透明感

 日本の不動産市場を取り巻く経済情勢の先行きに対する不透明感は、この半年間で明確に強まった。従来から国内金利の上昇や建築費の高騰が意識されていたが、米国の通商政策を巡る不確実性が新たな懸念材料として加わった。

 もっとも、不動産市況はこれまでのところ好調を維持しており、市況の転換が差し迫っているとの見方も成り立たない。当面の不動産市場は、実需および投資需要の両面に支えられ、底堅く推移するものとみられる。

改善傾向が続く賃貸市場
底堅い需要と賃料の上昇

 不動産賃貸市場は概ね改善傾向が続いている。オフィスはコロナ禍以降、需給の弛緩が続いてきた東京エリアにおいて、2024年に市況が明確に反転し、2025年に入ってからも続いている。

 東京以外の主要都市でもオフィス賃貸市場は明るい。これまでテレワークとオフィスワークを併用するハイブリッド型の勤務が定着した感があるが、オフィス需要の押し下げを招いていない。むしろ人材確保や生産性向上の観点から、より良いオフィスを求める需要の顕在化につながっている。

 住宅賃料の上昇も続いている。東京都区部をはじめとする多くの主要都市において、競争力の高い物件を中心に賃料は入居者の入れ替えのタイミングで順調に引き上げられている。特にその傾向は、ワンルームタイプの物件で顕著である。

 ファミリー向け物件は、入居者の賃料負担力との見合いから賃料上昇ペースが鈍っているとの指摘がある。しかし良質なファミリー向け賃貸物件のストックは希少であり、その賃料が下落に転じるような情勢とはなっていない。かつてのように「住宅の賃料は下がりもしないが上がりもしない」ことが常識とされていた時代と比べれば隔世の感がある。

 商業店舗の賃貸市場も依然として底堅い。インバウンド需要の受け皿となるような都心立地の小売店や飲食店への賃貸需要が根強いことに加え、食品スーパーやドラッグストアの売上が好調であることを背景に、生活密着型の商業店舗の賃料も引き続き改善している。 ホテルも一室当たりの宿泊料金が伸びる中、賃料が押し上げられている。

 その一方で、賃貸市況の回復に出遅れているエリアやアセットも一部で観察される。例えば首都圏の物流施設は、これまでの大量供給の影響をいまだ脱しきれていない。介護施設をはじめとするヘルスケア施設も、事業収支を容易に改善できないという特性があるため、賃貸市場において回復のきっかけをつかみ切れていない。