社会保障審議会・生活保護基準部会では、住宅扶助に関する議論が続いている。今回は、2014年5月30日に行われた議論を紹介する。
住宅扶助基準を設定するにあたって必要な調査は、どのように行われるのだろうか?そもそも何のために、住宅扶助の引き下げが必要なのだろうか?
どうしても住宅扶助を引き下げたい
厚労省の言い分
2014年5月30日、厚労省において、社会保障審議会・第18回生活保護基準部会が開催された。5月16日に開催された第17回から、2週間しか経過していない。2014年6月5日現在、前回の第17回も含めて議事録は未だ公開されていないが、配布された資料は厚労省サイト内のWebページからダウンロードできる。
冒頭、通例どおり、厚労省による資料「住宅扶助について」の解説が行われた。
この資料の冒頭で、「住宅扶助に関する主な論点」として、前回の議論での論点がまとめられている(3ページ~4ページ)。4つある論点のうち最初の「論点1」は、「住宅扶助特別基準額(家賃)の水準について」となっている。この「論点1」の最初の項目を見てみよう。
> 現行の都道府県、指定都市、中核市別に定めている住宅扶助の特別基準額の水準は妥当か。
① 住宅扶助特別基準額の妥当性を検証するにあたって、健康で文化的な最低限度の住生活を営むことができる住宅かどうかをみるための尺度は、住生活基本計画(全国計画)(平成23年3月閣議決定)において定められている最低居住面積水準(設備条件を含む。)でよいか。
※ 全国の民営借家では、約1/3の世帯で、最低居住面積水準(設備条件を含む。)が未達成の状況にある。
「住生活基本計画」とは、2006年に国交省が策定したもので、基準部会委員の園田真理子氏(明治大学教授・建築学)も策定に参加している。ここでは「最低居住面積水準」として、「健康で文化的な最低限度の住」にあるべき住居面積と設備が定められている。単身者の場合で面積は25平米、設備として考慮されているのはキッチン・浴室・水洗トイレ・収納である。世帯の場合には、家族の構成や人数によって基準とする面積が追加される。
国交省の「住生活基本計画」を基準として住宅扶助を検討することについては、前回までの議論で、委員たちから反対意見はなかった。むしろ「これを基準に」「これ以外の基準はありえない」という強い意見が多く見られた。
ところが厚労省の資料では、「最低居住面積水準(設備条件を含む。)でよいか」と記載されており、さらに「全国の民営借家では、約1/3の世帯で、最低居住面積水準(設備条件を含む。)が未達成の状況にある」とある。ここから、
「一般市民のための住の最低ラインよりもさらに劣悪な、生活保護利用者のための住の最低ラインを設ける必要があるのではないですか?」
という厚労省のメッセージを読み取らずにいることは困難であろう。