今回の決議を受け、小国川漁協は県との間で漁業権補償などの交渉に臨むものと見られる。その後、県から提示された補償案などを改めて総代会に諮らねばならない。その場合、漁業権に関する「特別決議」となるため、議決には過半数ではなく3分の2以上の賛成が必要となる。つまり、過半数の賛成による今回の「普通決議」でダム建設が一気に進むことにはならないのである。おそらく、ダムによらない治水を求める組合員に対し、今まで以上の激しい切り崩し工作が展開されるものと思われる。 

 いずれにせよ、6月8日の漁協総代会を経て、最上小国川ダム問題は新たな局面に入ったと言える。しかし、治水をめぐる本質的な疑問は置き去りにされたままとなっており、県のダムにこだわる硬直した姿勢のみが際立つばかりである。

本当に赤倉温泉は安全になるのか?
県が推進する「穴あきダム」への疑問

小国川漁協の総代会では、ダム容認派が過半数を占める結果となった。今後漁協は、県と漁業権補償などの交渉に臨むと見られる

 3つの本質的な疑問点がある。1つは、最上小国川ダムによって本当に赤倉温泉などの流域が安心安全となるのかという心配である。2つめは、本当に穴あきダムは河川など自然への影響が少ないのかという疑問だ。全国屈指の清流である最上小国川の素晴らしさを維持できるのかという不安である。そして3つめが、ダム容認の見返りとして提示された県の地域振興策についてだ。ダムを建設して地域を再生しようという県や町の主張への疑問である。はたしてそんなことが実現可能なのか。

 最上小国川ダムの治水の対象地である赤倉温泉は、川沿いギリギリに温泉旅館が立ち並ぶ特異なところである。ダムによらない治水対策を求めている住民グループ「最上小国川の清流を守る会」(草島進一・共同代表 以下「守る会」)などが5月17日と18日、地元(新庄市と最上町)で河川工学や地質学など各分野の専門家を集めてシンポジウムを開催した。いわば3つの本質的な疑問への回答を得るための公開学習会である。主催者側は県の担当者らにもシンポジウムへの出席を要請したが、なぜか、全て断られた。

 赤倉温泉はこれまでしばしば洪水に見舞われたが、それは川の水が外に溢れ出る氾濫ではなく、雨水が川に流れ込まないことによる内水氾濫だった。住民グループは、「県が温泉確保のために川の中につくった堰が河床に土砂を堆積させ、水害を起こしやすくしている」と見ていた。

 シンポジウムでパネラーの今本博健・京都大学名誉教授は、「川床が高い状態の赤倉温泉街はダムができても危険です。河床掘削や護岸整備が優先されるべきで、技術的に可能です。それを行えばダムは不要です」と明言した。