ピラミッド作りは決して一部のトップ選手のためだけに行うのではなく、各競技の裾野を広げ、共生社会で一人でも多くの人にスポーツを楽しんでもらうための手段なのだ。裾野が広がることで、トップに昇格する選手のレベルも上がり、そういった選手が活躍し注目されることで、その競技の裾野がさらに広がりを見せる。

 このような形を定着させ、施設や指導者不足の問題も解決させ、日本全国で障害者スポーツが日常生活のなかで当たり前のように行われることがわれわれの目指しているものであり、6年後のパラリンピック後にレガシーとして残すべきものだろう。

*  *

健常者と障害者を隔てる壁を
作っているのはだれか?

 各地域のスポーツクラブや企業などの協力もあって、障害者スポーツの普及は少しずつだが、間違いなく前進している。しかし、障害者が日常的にスポーツを行うための環境づくりはまだ発展途上の段階だ。加えて、障害の種類や度合いによっては、スポーツに触れる場所も用意されていない現状も存在する。

 前回の連載で紹介した神奈川県川崎市のNPO法人「高津総合型スポーツクラブSELF」では、昨年から知的障害者向けのバリアフリースポーツプログラムを開始し、現在は地元中学校の教室や体育館を借りて、体操や卓球といったプログラムを提供している。

 2012年度の内閣府の調査によると、日本には知的障害を持つ人が約54万人おり、そのうち18歳以下は約13万人となっている。知的障害者の運動不足はかなり深刻で、学校に通っている間は体を動かす機会が用意されているが、卒業後は自宅と職場の往復だけになる人が大多数で、高校卒業後に定期的に運動ができる場所がほとんど存在しないため、家に閉じこもりがちになるケースが多いのだという。

 SELFで広報を担当する戸沼智貴氏が知的障害者を対象にしたスポーツプログラムを作った背景について語る。

「このプログラムを企画する際、さまざまな資料に目を通し、色々な方にもお話を伺いました。基本的に18歳以上になると、日常的にスポーツを行える場所を探すのが困難になるため、仕事以外で外出する知的障害者は少なくなります。結果、運動不足やストレスが原因と思われる過食が原因で、肥満に悩む人が増えていくのです。

 また、保護者の負担も大きく、そういった問題を解決するために、スポーツを通じてみんなが集まれる場所を提供できないかという話になりました。SELFは総合型スポーツクラブですので、その特性を活かして、複数のスポーツをみんなで楽しめるようなプログラムを目指しています」