

AR技術とSNSを組み合わせたコミュニケーション支援システムも、ワールドカップ招致の際に提案されたものの一つだ。顔認識技術などを駆使して、スタジアムを歩く人々のSNSにアクセスし、相対でのコミュニケーションやマッチングを支援する。
こうした技術も、精度の問題はあるものの、現時点における顔認識技術の高度化や、facebookに代表されるSNS事業者の顔データベースの蓄積を考えれば、技術的には実現可能だ。事業開発の観点からは、データベースの蓄積量が鍵となるであろう。
むしろこのようなサービスは、技術面よりもプライバシーやセキュリティといった側面の課題が、今日ではクローズアップされている。実際、「顔」というのは、それ自体が個人情報であり、プライバシーやセキュリティの観点から、取り扱いは慎重にされるべきだ。また無機物を対象にしたARでの案内等も、クラッキングによって誤った誘導が行われ、結果的に混乱を拡大する危険性もある。
パブリックビューイングの究極の形として提案されたもので、ゲームが行われていないスタジアムで、実物大・等身大の裸眼立体映像をピッチに投射し、あたかも本物の試合がそこで行われているかのように観戦できる技術である。
技術的な実現可能性という面では、おそらくもっともハードルが高い。スケールを極めて小さくすれば実現可能なのだが、実物大を実現するには、映像を構成するための、光源や光量の課題がある。また、裸眼立体映像を実現するには、平面ディスプレイで少なくとも8K以上の精細度が必要である。会場の大きさを考えると、相当高い精細度必要だ。
さらに投射対象をどのように構成するかも未解決である。スクリーンを立てるというのがオーソドックスな手かもしれないが、それならばスタジアムより映画館の方が光量や音響面も含めてアドバンテージがある。スタジアム規模ならウォータースクリーンの様なものの方が良いかもしれないが、いずれにしても相当な困難がある。
逆に言えば、様々な条件を調整してハードルを下げれば、可能性は大きく高まる。また、超大容量コンテンツを伝送するための技術開発は、冒頭で触れたようにすでに8K映像の伝送という形で、今大会から実証実験が行われている。実現に向けたボトルネックは、徐々に解消されつつあるということだ。