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スマートフォンの理想と現実

相性がいいスポーツと通信・放送テクノロジー
W杯や東京五輪を10倍面白くする技術の実現度は?

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第63回】 2014年6月18日
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観戦サポート機能(1分30秒)

 AR技術とSNSを組み合わせたコミュニケーション支援システムも、ワールドカップ招致の際に提案されたものの一つだ。顔認識技術などを駆使して、スタジアムを歩く人々のSNSにアクセスし、相対でのコミュニケーションやマッチングを支援する。

 こうした技術も、精度の問題はあるものの、現時点における顔認識技術の高度化や、facebookに代表されるSNS事業者の顔データベースの蓄積を考えれば、技術的には実現可能だ。事業開発の観点からは、データベースの蓄積量が鍵となるであろう。

 むしろこのようなサービスは、技術面よりもプライバシーやセキュリティといった側面の課題が、今日ではクローズアップされている。実際、「顔」というのは、それ自体が個人情報であり、プライバシーやセキュリティの観点から、取り扱いは慎重にされるべきだ。また無機物を対象にしたARでの案内等も、クラッキングによって誤った誘導が行われ、結果的に混乱を拡大する危険性もある。

フルコート3Dビジョン(4分14秒)

 パブリックビューイングの究極の形として提案されたもので、ゲームが行われていないスタジアムで、実物大・等身大の裸眼立体映像をピッチに投射し、あたかも本物の試合がそこで行われているかのように観戦できる技術である。

 技術的な実現可能性という面では、おそらくもっともハードルが高い。スケールを極めて小さくすれば実現可能なのだが、実物大を実現するには、映像を構成するための、光源や光量の課題がある。また、裸眼立体映像を実現するには、平面ディスプレイで少なくとも8K以上の精細度が必要である。会場の大きさを考えると、相当高い精細度必要だ。

 さらに投射対象をどのように構成するかも未解決である。スクリーンを立てるというのがオーソドックスな手かもしれないが、それならばスタジアムより映画館の方が光量や音響面も含めてアドバンテージがある。スタジアム規模ならウォータースクリーンの様なものの方が良いかもしれないが、いずれにしても相当な困難がある。

 逆に言えば、様々な条件を調整してハードルを下げれば、可能性は大きく高まる。また、超大容量コンテンツを伝送するための技術開発は、冒頭で触れたようにすでに8K映像の伝送という形で、今大会から実証実験が行われている。実現に向けたボトルネックは、徐々に解消されつつあるということだ。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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