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データ重視経営と企業風土のギャップ(前編)
――「うちでは昔からこうしてきた」は通用しない

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第20回】 2014年6月27日
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データ分析に立ちはだかる壁

 カジノやホテル運営の大手であるシーザーズ・エンターテインメントのCEOゲイリー・ラブマン氏は、前述の『分析力を武器とする企業』に寄せた序文で、分析重視への転換を妨げるのは、企業でごく普通に見られる次のような症状であると述べている。

  • 「ウチでは昔からこうしてきた」という「常識」が幅をきかせ、その正当性が検証されない。
  • 経営陣がデータや事実の裏づけのない意思決定をしても、批判されない。むしろヒラメキ型のリーダーの方がもてはやされる。
  • 分析のスキルを備え、データの山から宝を掘り出そうとする人間がいない。何も思いつかない時に仕方なくやるのが分析だとされ、しかも専門知識をもたない人間が取り組んでいる。
  • 「そのアイデアがよいか悪いか」よりも「それをいったのは誰か」が問題にされる。

  •  

 トップダウンによる組織的な取り組みで先を行く欧米においても、データ分析の阻害要因として企業風土が指摘されている点が興味深い。日本国内の企業では、同氏が指摘したような症状によってデータ重視の経営や事実に基づく意思決定が根づかない現状がより顕著だと言わざるを得ない。

 ITRが毎年実施している「IT投資動向調査」では、企業が注力するアプリケーション分野に「データ分析」が常に上位にあがっている。また、大企業のほとんどがデータウェアハウスの構築やデータ分析ツールの導入を何らかの形で実施済みである。

 しかし、それらの企業の多くが分析力を武器と成し得ているかといえば、前述のダベンポートが指摘した4つの条件に照らしてみても程遠い状況といわざるを得ない。いくつかの部門で特定のユーザーがデータ分析を行っていたり、限られた領域での意思決定に活用している事例は数多く存在するが、経営幹部の強いコミットメントの下にデータ分析を戦略の中心に据え、多方面の業務分野を対象として取り組んでいるという企業は少数派といえる。

データ重視経営に必要な条件とは

 さて、データ重視の経営を実現し、データ分析をビジネス貢献につなげるための要件について考えてみよう。整備されたデータ基盤や使いやすい分析ツールは、データ分析力を高める要素となる。また、データを活用してビジネスに役立たせるためには、従業員の情報リテラシが欠かせない。つまり、企業のデータ分析力は次の3つの柱で成り立っており、これらのどれが欠けてもデータをビジネスに活かすことはできない。

  • データ環境:分析ニーズに足る情報量を備えていることに加えて、データの意味・所在・所有者の明確化、データの品質や鮮度の確保など、管理面の組織対応が深くかかわる。企業唯一の真実を提供するデータ環境を備えることが重要である。性能やセキュリティに関する管理もデータ環境の一要素である。
  • ツール環境:データ分析ツール、帳票ツールなど対象データを分析するために適切なツールを提供する。操作に関するトレーニングやヘルプデスクの配置もツール環境を構成する要素である。
  • 情報リテラシー:ここでいう情報リテラシは、統計に関する知識やツールの操作能力だけでなく、仮説立案や分析結果をビジネス行動に結び付ける能力が含まれる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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