サークルやゼミの連絡、待ち合わせ、他愛ない雑談もここでします。いまは中学生、高校生もスマホを持つ時代ですから、彼らも同様でしょう。思春期からスマホを使い始めた若者たちは「スマホネイティブ」とも言われますが、彼らは同時に「LINE世代」でもあるのです。

 その結果、「話し言葉をタイピングして書くこと」には慣れていますが、「話し言葉で話すこと」が圧倒的に減っています。LINE世代の学生たちは無料通話でたくさん話せる環境が整ったのにもかかわらず、電話をあまりしません。だから、伝えたいことをまとまって口頭で伝える、相手の微妙なニュアンスを抑揚などで判断しながら察知し、対話を洗練させていく経験が激減しています。

 ですから、LINEでつながっていない相手、たとえば教授や社会人にアポを取る際に電話をかけることやお願いメールを書くことには随分と消極的です。「電話をしろ」と学生に言うと「えっ?」と驚いた反応が返ってきます。最近は、長文メールを書く機会も大幅に減っています。長文を話すことも書くことも退化しているのです。

 また、今の学生は、電話をしても出ないことが多いようです。緊急の用事で、私の助手が電話をかけてもほとんど出ないとボヤいています。昔なら、目上の人からの電話であれば、すぐにコールバックするのが常識でしたが、LINEで常時接続されているので、携帯に大事な電話がかかっているという発想がないのかもしれません。悪気がないのに、こうして違う世代から信頼を失っていく学生たちの様子が目に浮かびます。

 電話に慣れなければ、目上の人、関係性が深くない人に対しての敬語がうまく使いこなせません。的確にポイントをまとめて喋ることができないので、要領よくならずにダラダラと話しています。電話は声だけのコミュニケーションなので会話での描写力、説明能力が要りますが、場数をこなしてなければ上達しません。声帯も使っていないので「筋力不足」です。

 当然のことながら、プレゼンでも限られた時間で、人の心を打つような迫力のある喋りができるはずがありません。昔風に言うなら「オルグ」して巻き込む力に欠けるのです。

常につながるLINEの“落とし穴”

 もちろんLINEを否定しているわけではありません。私も、大変、便利にLINEを使っています。ただ、私にとっては、LINEは一つの便利なコミュニケーション手段で、いいところもあれば、わるいところもあるツールにすぎませんが、学生にとっては、LINEのウエイトが大きすぎます。

 こうした議論はいつも繰り返されていて、私が以前、SFCで教えていた90年代後半も、インターネットが普及し始め、学生たちはメールでやり取りしていました。その当時も有識者やメディアが「今どきの若者は面と向かって人と話すのが苦手だ」といったような指摘をしていました。