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――そうすると、日本が集団的自衛権の議論をはじめて、それが周辺国に伝わることで、東アジア全体のバランスが微妙に変化しているのでしょうか。アメリカから見ていて、どう感じられますか。

小野田 そもそも、集団的自衛権がどうかというよりも、日本の安全保障をとりまくダイナミズムは大きく変化しています。冷戦が終わってアメリカの1極支配体制がアメリカと中国の2極に「パワーシフト」しており、それが東アジア地域に大きく影響している。韓国やフィリピン、ベトナムなどのアセアン諸国もこの変化に対する影響を感じている。

 どのようにそれぞれの国の安全保障を確立していくのか。日本の安全保障は「パワーシフト」というダイナミズムのまっただなかにあるということです。

 そうすると拡大核抑止、アメリカの核の傘の信頼性は今後どうなっていくのか。ダイナミズムのなかでどう変化するのか、これまでのようにアメリカに依存していていいのか。こうした難題が次々と出てきます。

 そのなかで、日本の安全保障を考えたときに、アメリカとの共同歩調と関係強化をはかることが基本で、そのために集団的自衛権行使容認というツールが必要なのではないか、ということだと思います。

大きく影響しているのは
アメリカの「パワーシフト」

――今まで日本で行われてきた議論ですと、集団的自衛権というのは、地域の平和と安定を獲得するという安全保障の最大の目的を達成するための、一つのツールなんですよ、という受け取り方が、国民はなかなかできていないのではないかと思います。すぐに「集団的自衛権行使容認=戦争に参加」のような構図で捉えられることが多いようです。

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加藤 アメリカの識者と議論していると、彼らは、集団的自衛権はもちろん大事だけど、安全保障のなかでそれは自国が攻撃されたときにどう反応するかという“個別的自衛権”の話ではない、集団的自衛権は一つのツールであって、集団的自衛権が国全体の安全保障のすべてではない、という点を指摘されます。

 集団的自衛権は安全保障全体の話のなかで、どれだけの割合を占めているのか。まずは国際社会のなかでの日本の安全保障をどうしていくか、東アジア全体で他国と強調しながらどのように平和と繁栄を確保していくか、個別的自衛権と集団的自衛権の関係性はどう処理するのか。基本的にはこういう順番で考えていく必要があるんじゃないかと思います。

 なかでも重要なのは、小野田さんがおっしゃったように「パワーシフト」という環境のなかで、日本の安全保障をどうするのか、という点ではないでしょうか。世界で起こるテロや内戦、核の問題、海賊の問題、中国が南シナ海でとっている挑発的行動、ロシアがウクライナに対してとった拡張的行動、そういうさまざまな安全保障に関するイシューがあるなかで、“日本は日米同盟を強化していかなければならない”という基本的な問いが投げかけられる。その日米同盟というのは、東アジア地域全体の平和と安定に寄与するもの、つまり「公共財」としての価値を内包するものだという認識が必要だと思います。