――なるほど。日本の安全保障の話があって、全体の話の中で、集団的自衛権はどれだけの割合を占めているんだろうか。そういうふうに整理していく話ですよね。しかし、日本では集団的自衛権が安全保障のなかに占める割合は100%に近いんじゃないか、と思えてしまいます。

小野田 加藤さんの言うような順番というよりは、私のような元自衛官からすると、やはり安全保障の話をするときは、“集団”より“個別”が基本なんですよ。

 自衛隊にとって、個別的自衛権の運用について、諸外国並だと思いますか? 答えは「ノー」ですよ、「ノー」。今回、防衛計画大綱のなかで、グレーゾーンについての対策について記述がありますが、これは個別的自衛権が発動される前の話です。個別的自衛権の発動、即ち防衛出動下令には、①急迫不正の侵害、②他に取り得る手段がない、③必要最小限の武力行使という3つの条件があって国会の承認が必要となっています。防衛出動に至っていない平時で事態が急速にエスカレーションしていくような場合にどうするかという問題が、いわゆるグレーゾーンの問題で、自衛隊にとってはどう動けるのかとても重要です。

 自衛隊の行動は、法に定められていることだけしか実行できないという「ポジティブ・リスト」になっていますが、諸外国の軍隊は法で禁止されていること以外は実行可能という「ネガティブ・リスト」になっています。これは軍隊の本質が、何が起きるかわからない環境で行動することにあるからですが、だからといって、何をしても良いというわけではなく、状況に応じて行動の基準が指示される仕組みになっています。

 集団的自衛権の行使についても、同様の仕組みの中で指示されるべきものであって、実際の行使は状況に応じて政府が判断するのです。

*後編は、7月15日公開予定です。日本での集団的自衛権についての議論が、アメリカの識者の目にどのように映っているのか。中国をはじめとした周辺国とのバランスはどう変わるのか、そうした周辺環境の変化のなかで、日米同盟を軸に日本は東アジアの平和と安定にどう貢献すべきなのか。アメリカで研究生活をおくる二人だからこそ見えてくる視点、声をベースに議論は進みます。