シリコンバレーのテクノロジー業界は年配者に不親切なことで有名だ。まるで大学のキャンパスのようなオフィス内では、プログラマーも40歳を過ぎると居心地が悪くなるという。テクノロジー開発は、主に若者ユーザーに向けたビジネスであるのは間違いない。

 それでも高齢化するユーザーを無視することはできない。テクノロジー業界がシルバー世代をどう捉え、彼らにどうマーケティングしているのか、あるいはシルバー世代はテクノロジーにどう親しもうとしているのか。いくつかの例から見てみよう。

アマゾンは「アクティブな50代」を提案

米アマゾンの「50+ ACTIVE & HEALTHY LIVING」のページ

 まずは、アマゾン。アマゾンは昨年以来、シルバー世代のための専用ストアーをオープンしている。ストアーといってもただサイトを特設し、そこに関連した商品をカテゴリー別に並べているだけだが、それでもシルバー世代が便利なように配慮した親切さが感じられるという点では、優れたマーケティングだ。

 このページには、まずシルバー世代という用語は登場しない。サイトのタイトルは、「50プラス。アクティブで健康な生活のために」ということになっている。そのため目立つのは、ビタミンやミネラル類のサプリメントや、フィットネス関連の製品だ。

 フィットネス関連製品には、毎日の活動量をモニターするウェアラブルが並んでいるが、心拍数をモニターするだけの簡単なものやGPS受信機能付きのものがあり、一般のウェアラブル製品とは異なったシルバー世代向けの商品キュレーションが行われているのがわかる。

 それ以外では、糖尿病管理のための薬品や医療品、血圧測定器、リウマチ患者のための生活用品、おむつ類などがあるが、その一方で化粧品、旅行商品や旅行ガイド、エンターテインメントのためのコンテンツなどが同じページに揃っており、シルバー世代の生活をひとつのトーンに偏らせることなく、さまざまな局面で演出している。

 アメリカでシルバー世代になると入会の勧誘がくるのが、AARP(American Association of Retired Persons)である。リタイアした人々の生活をサポートするためのNPOで、全米の会員数は3700万人。政治的にも経済的にも影響力のある組織だ。AARPが発行する会員向けの月刊誌は、全米1位の雑誌発行部数を誇っている。

 この会員の購買力を狙って、会員向けのディスカウントを行っている企業も多い。その1社はまたもやアマゾンで、キンドル・リーダーやタブレットの10%ディスカウントを提供する。他にもプリペイ型携帯電話会社などもお得なディールを出している。