6月下旬、南国タイの保養地プーケットで、米国シリコンバレーを拠点とする、とあるベンチャー企業の事業説明イベントが開かれた。「データセンター産業の3度目の革命期」を主導するNutanix(ニュータニックス)とはどんな会社か。(週刊ダイヤモンド編集部 後藤直義)

 もしも、誰もがグーグルのような高度なデータセンターを30分で作ることができたら──?

Googleの“心臓部”から生まれた<br />気鋭のベンチャー「Nutanix」の革新性タイのプーケットで開かれた「Nutanix Partner's Summit」で、データセンターの新潮流を語るハワード・チン上席副社長 
Photo by Naoyoshi Goto

 6月下旬、南国タイの保養地プーケット。リゾートホテルのホールを貸し切って、米国シリコンバレーを拠点とする、とあるベンチャー企業の事業説明イベントが開かれた。

「今、私たちはデータセンター産業の3度目の革命期にいます。全てが劇的に変わっています」

 壇上でプレゼンテーションを始めたのは、米Nutanix(ニュータニックス:本社カリフォルニア州)で商品とマーケティング部門を担当するハワード・チン上席副社長だ。IT産業のインフラであるデータセンターが、今、新しい潮流の中にあるのだと熱弁した。

 日本でその社名を知る人は多くないが、今、この会社が掲げているビジョンが大きく注目されている。オラクルでデータベースサーバの開発を手がけたデラージ・パンディ氏が、グーグルのデータセンターを設計していた3人の敏腕エンジニアらを巻き込んで、09年に創業した気鋭のベンチャーだ。

 データセンターというのは、ITサービスを展開する企業の“心臓部”に当たる。

Googleの“心臓部”から生まれた<br />気鋭のベンチャー「Nutanix」の革新性Googleが公開したデータセンター内部の様子。Nutanixは、その基幹システムの設計にかかわっていた技術者たちらも立ち上げに加わった
(C)Google

 グーグル、フェイスブック、アマゾンといったIT界の巨人たちは、彼らのサービスには欠かせない膨大なデータ量を処理するため、高度に洗練されたデータセンターを世界中に展開している。彼らの強みはこれらのデータセンターを、極めて安い運営コストで、効率的に動かし、途方もなく高い拡張性と共に構築するところにある。

 彼らが“勝者”たりえたのは、サービスそのものの内容もさることながら、そんなデータセンターを独自に作れる力があったからこそ、ともいえる。

 そこで、ニュータニックスの創業者らはこう考えた。

 もしグーグルの自社データセンターの設計思想や技術をベースに、誰もが家電製品のように扱えるシンプルな商品に仕立てて“解放”したら、どうなるのか。世界中の無数の企業にとっては福音になり、ひいては巨大なビジネスチャンスにつながるのではないか、と。

 そんな同社の野望に惹かれて、シリコンバレーで活躍していた人材と、ベンチャーキャピタルや金融機関から提供された合計170億円を超える資金が集まった。

 11年にはついに商品が完成して出荷スタート。四半期ごとに倍々ゲームで売上高を伸ばし、すでに年商100億円を突破。社員も大きく増えており、600人(14年6月時点)の約半数をエンジニアが占めている。

 この日にプーケットで開かれたイベントは、同社の最新商品をさらに顧客に広めるため、日本を含むアジア・オーストラリア地域でニュータニックスの販売代理店となっている協力企業らを招待して開いたものだったのだ。