円以外の通貨に対するドル安が広がってきました。これがドル/円で実感しにくいのは、ドルにつられるかたちで円も下落し、円・ドル「同時安」になっているからです(「「100年に一度」の後は「ドルの危機」。ドル/円が50~60円になる可能性も!?」参照)。
この円・ドル「同時安」がまだ続くならば、仮にドル安が一段と進んだとしても、ドル/円はそれほど下がらず、クロス円は堅調を維持することになるわけですが、さてどうでしょうか?
私は、円・ドル「同時安」はすでに終わりつつあるのではないかと思っています。
円とドルの総合力を示す実効相場(日経通貨インデックス)を重ねてみると、確かに2004年頃から、両者はともに下落しています。つまり、円・ドル「同時安」が展開されてきたことがわかります。
ただ、それは2007年後半から2008年前半にかけていったん「崩壊」しています。ドル実効相場が続落したのに対し、円の実効相場は急騰に転じ、円・ドル連動は完全に崩壊して、両者はむしろまったく正反対の動きとなりました。
そして、この円とドルの連動関係は2008年後半から復活し、円・ドル「同時高」となりましたが、この円高とドル高の程度はかなり違ったものになっていました。
こんなふうに見てみると、2004年頃から続いてきた円とドルの連動関係が、かなり変わり始めてきていることは確かだと思います。
円のドル・ペッグ制という
「奇妙な関係」
ただし、冷静に考えてみると、円とドルのような主要通貨同士が2004~2007年を中心に連動関係を続けてきたということ自体が、とても奇妙な話だと思います。
ドル/円とは対象期間が違いますが、ドルとユーロの実効相場を重ねてみると、2004年頃からはむしろユーロ高、ドル安といったように反対方向に動いていることがわかります。これが主要通貨同士の正常な関係でしょう。
円とドルが連動するということは、言い換えれば「円のドル・ペッグ制」のようになっていたということです。
ペッグ制度というのは、途上国通貨などが主に米ドルなど主要通貨に連動することを指しています。途上国通貨がドルやユーロに連動(ペッグ)することは珍しくありませんが、円のような主要通貨がドルに連動するとなると、本来はとても奇妙なことだと思います。
しかし結果的に、2004年頃から一時の例外期間を除いて、そのような「円のドル・ペッグ制」といった奇妙な動きが多く見られてきたのです。なぜそのようになったのか、そして「奇妙な関係」はまだ続くのでしょうか?