「今信託業界で一番大きな話題といえば、これ」。ある信託銀行幹部がこう熱を込めて語るものがある。日本郵政の証券代行のコンペの行方だ。同社は2015年度に株式上場を目指すが、それに向けて7月第2週にコンペが行われたというのだ。
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証券代行とは、株主名簿の管理や配当金の支払いなど、発行会社から受託する株式にまつわるあらゆる業務のこと。上場すれば株主数が40万人になるとも50万人になるともいわれ、“巨大発行会社”になること間違いなしの日本郵政のそれは、信託各社にとって垂ぜんの的なのである。
かつては「信託村」といわれるほど各社が親密だった信託業界だが、12年にメガ信託の三井住友信託銀行が誕生したことで蜜月時代は終わりを告げた。同行と三菱UFJ信託銀行が「信託トップの座をめぐってバチバチ戦っている」(信託銀関係者)ほか、銀行、信託、証券の連携を高々と掲げるみずほ信託銀行もシェア拡大を狙う。
今回のコンペも、過去の実績から、この大手3社を有力候補とみる向きが専らだ。証券代行の業務規模を表す管理株主数の多さはトップ2社が圧倒的。みずほには、過去最大の上場案件となった第一生命保険の証券代行を受託している強みがある。「まさに三つどもえ」──。ある信託銀役員はコンペを前に、歯に衣着せずこう語る。
無理もない。発行会社1社につき1信託しか請け負えない証券代行は、ただでさえ「取れるか取れないか」のゼロサムゲームだ。