IoTがもたらす破壊的インパクト【前編】 <br />米国で起こり始めた大変革の鼓動6月16日、17日の2日間、米ボストンで開催された「PTC Live Global 2014」。主催する米大手CADソフトメーカーのPTCは、自社新製品のほか、IoTがもたらすインパクト、産業界の未来について発表。基調講演では同社CEOのジェームス・E・ヘプルマンが登壇した Photo:DOL

 IoTは産業界に破壊的なインパクトを与える――。

 IoTはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」という、よくわからない日本語訳があてがわれている。IoTの意味をもう少し噛み砕いてみると、IoTとはパソコンやタブレット、スマートフォンだけではなく、身の回りのあらゆるモノに埋め込まれたセンサーがインターネットに繋がり、相互で通信が可能になる技術や仕組み、状態のことだ。

 企業活動は製造業を例にとると、設計や開発、製造、在庫管理、販売、アフターサービスというバリューチェーンを描く。あらゆるものがネットにつながるということが、実はこのバリューチェーンの各局面のみならず、全体にも変革を迫るインパクトをもたらすのだ。では、このIoTを活用すると、産業界にどのような変化が起きるのだろうか。以下に実際の事例を挙げよう。

安全という新サービス生んだ化学企業
収益構造を一変させた空調設備会社

 米国マサチューセッツ州ウォルサムを拠点に世界に5万人の従業員を擁するサーモフィッシャーサイエンティフィック。ニューヨーク証券取引所に上場する、総合化学サービス企業だ。

 同社はIoTを活用し、「TruDefender FTi」という消防や警察向けの新しいサービスを開発した。従来と違って、スピードと正確性、事故現場などで作業をする隊員の安全性を確保することができている。

 たとえば、何らかの化学物質の漏洩事故が起きたとしよう。事故現場に到着した隊員は、まず専用端末で現場の空気の汚染状況を測定する。次にその測定データがインターネットを介して専用サイトに転送され、安全な場所にいる同社の分析官が測定データを詳細に分析。結果をすぐに現場の隊員に伝達する。事故現場では汚染を最小限に抑えることができ、対策もすぐに打てる。

 かつてのように、現場の隊員が扱う測定端末が“スタンドアローン”であればこうはいかない。「TruDefender FTi」では、通信ができる専用端末を使っており、かつそれらを分析するための専用サイトなどのインフラが整備されているため、スピードと正確性、安全性が実現できるのだ。