少しきな臭くなってきたように感じる。消費税率が上がって4ヵ月が過ぎ、明確に景気が浮揚したという実感が乏しい。もちろん、増税のダメージは想定の範囲内であり、これで景気が腰折れしたという証拠はない。
しかし、景気動向指数を見ると、一致指数は2014年1月をピークにして、5月まで下落を続けている(図表1参照)。数字上は、景気後退の一歩手前に見える。
鉱工業生産統計も弱い(図表2参照)。出荷指数は2~6月までから一貫して下がっている。消費税の反動減もあるが、どうも輸出が立ち上がってこない。特に自動車は厳しく、生産予測指数では7、8月まで減産が続く見通しである。内需の低迷もあるが、米国経済の拡大の恩恵が日本の輸出企業に伝わってこないことも、目先の悪化に拍車をかけている。
前述のような経済環境では、一時は影を潜めていた消費税反対論が再び勢いを増す可能性がある。安倍首相は7~9月のGDPを見て、二次速報が発表された直後の2014年12月初めに、2015年10月に税率を8%から10%へと引き上げるかどうかを最終判断することになっている。その判断の手前の8~11月にかけて、4月の増税は「やっぱり悪影響が深刻だった」という意見に傾きかねない。
実際の景気は、景気腰折れではないし、盛り上がりに欠ける展開に過ぎないが、もともと消費税反対を唱えていた人から見れば、個人消費の低調さは消費税増税がもたらした害悪だとして徹底的に批判できる。
高成長が当たり前の
前提がおかしい
12月初の消費税増税の判断では、7~9月の経済成長率が年率2~3%のプラス成長になることを条件として、安倍首相が決断すると言われている。11月後半に有識者が集まって、判断の材料を論議するという見方もある。