若い世代の地方への定着促進には
実現可能性やロジックに懸念が残る

 以上のように、個々の政策について見れば、地方にとって好ましいものも多い一方、成長戦略の根幹に関わる重要なコンセプトである、「若い世代の地方への定着促進」には、実現可能性やロジックに懸念が残る。

(1)生産性向上なくして雇用の受け皿とはなりえず

 人口吸引力は、地域の生産性、すなわち人口一人が生み出す富(付加価値)と密接な関係がある(図表2)。すなわち、人は豊かな地域に流れ込みやすいということである。

 戦後東京圏の人口流入がマイナス、すなわち転出超過となったのは、バブル崩壊以降の景気対策として公共投資額が急増した1994年と1995年の2年間だけである(図表3)。

 このため地方では、立地する産業の生産性を高め、一人あたりの所得を引き上げることが必要である。例えば米作は、平均的な耕作面積が小さく、収益性が低いため、地域経済をけん引する自律的な産業とはなりえていない。現担い手が高齢化している現状をチャンスととらえ、少数の農家や企業に農地を集約し、米作を産業として自立させることが不可欠である。

 平均的な賃金が製造業の7割程度である観光業や医療・介護サービスも同様である。特に介護では、IT化やロボットの導入により、低賃金の労働集約型産業から脱却し、一人ひとりの担い手がより多くの収入を得られるようにする必要がある。

 まずは、地方の産業の付加価値生産性を高めることに注力することが必要であり、若い世代の定着は、あくまでその果実であり、必達の目標とすべきものではない。

(2)過度な地方への人口分散政策はわが国全体の活力低下に

 地方産業の生産性が十分高まらない段階で、一部の産業に補助金を付与するなどして無理に若者を呼び込むことは、ただでさえ人口が減少しているわが国において、貴重な労働力を浪費することにつながり、国全体の経済成長を抑える要因となる。