アルファベットは
なぜアルファベットと呼ばれるのか?
たった26文字でヒトの世すべてを表す文字システム、それがアルファベットです。ABCの一文字一文字は、子音か母音の一音に対応するのみで、音節すら表現しません。音素文字(*1)と呼ばれます。
でも、その便利さ(*2)は強烈です。漢字言語圏であろうが、アラビア言語圏であろうが、フランス言語圏であろうが、世界中、メールアドレスはABCの基本アルファベット(*3)を使います。
ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ
今回の「日常からの発見」は、このアルファベット。まずはその「名の由来」が問題です。アルファベットはなぜ、アルファベットというのでしょう?
ヒントは「アルファ / ベット」です。わかりましたか?
現代の基本アルファベットは、ラテン文字(紀元前6世紀~)そのものであり、それはギリシア文字から受け継がれたものです。いずれも、簡素な音素文字であり、文字のカタチも似ています。
つまり、現代アルファベットの直接的祖先は、(まずは)ギリシア文字だということです。小文字で書けば、
αβγδεζηθικμνξοπρστυφχψω
われわれにもっともなじみ深いギリシア文字は「π(パイ)」でしょう。3.14159…という円周率そのものを表します。角度を表すθ(シータ)、差分を示すδ(デルタ)、などもありますが、なんといってもメジャーなのは、α、β、γでしょう。アルファベットのA、B、Cにあたります。
α / β=アルファ / ベータ。
そう、これがアルファベットの語源です。「いろは歌」という名称が、ひらがなの最初の3文字で全体(46文字セット)を表しているのと同じように、アルファベットは最初の2文字で全体(26文字セット)を表しているだけなのです。
更に、そのギリシア文字が、フェニキア人によるフェニキア文字(*4)(紀元前11世紀~)に起源を持つことも、わかっています。では、この最強文字アルファベットの真のルーツは一体どこにあるのでしょうか。古代、地中海全域を舞台に活躍したフェニキア人がつくり出したものなのでしょうか。
*1 表音文字は1文字で1音節以上を表す音節文字(ひらがななど)と、音素文字とに分かれる。
*2 日本語表記には、ひらがなやカタカナ100文字弱だけでなく、表意文字である漢字 数千文字が必要。
*3 イギリス以外は自言語の発音に合わせて多少バラエティを持っている。ドイツ・アルファベットならAやOを加えて30文字、フランス・アルファベットならEやAを加えて42文字、といった具合。
*4 このフェニキア文字には母音が無く、子音を表す文字しかない。ここから、別系統で生まれたのが今のアラビア文字(7世紀~)