ボスを客観的に評価する目はピカイチ
女性秘書が明かす「優れたリーダー」の条件
本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。
これまでは連載タイトルの通り、組織にとって問題となるネガティブな心理について述べてきたが、今回は趣向を変えて、ポジティブな側面について述べようと思う。言うならば、「白い心理学」である。
先日、研究のため日本に帰国した際、秘書経験の長かった女性たちの話をうかがうことができた。筆者が彼女たちに尋ねたのは、「グローバル時代の優れたリーダー」についてだった。
筆者は、リーダーについて尋ねるならば、「優秀で経験豊かな女性秘書」にインタビューすべきだと、かねてから思っていた。秘書経験の長い人は、多くのリーダーに仕えたことがあるため、相対的にどんなリーダーが優れているかを判断することができる。
中でも優秀な秘書は、組織全体の視点からリーダーの行動理由を分析することができ、より深くリーダーシップを理解している。さらに女性のほうが、女性視点からリーダーを観察できるため、「セクハラ」「パワハラ」といった問題を抱えるリーダーを見抜きやすい、といった理由もある。
世の中に、「リーダー」や「管理職」の肩書きを持つ人はゴマンといる。だがその中で、ベテラン秘書を感心させるほどの資質を持つ人物は、そう多くはない。したがって、インタビューでは必然的に「大多数のダメなリーダー」ではなく、「少数の優れたリーダー」について時間をとって語ってもらうことになった。
今回は、彼女らの話の中から、特に印象深かったリーダーを2人紹介したい。
ある中堅企業が、政府の事業を含む数億のプロジェクトを受注した。そのプロジェクトリーダーとなった人物を、仮にA氏としよう。筆者がインタビューした女性は、そのプロジェクトの秘書として採用され、そのときに初めてA氏に会ったという。