1904年、シュンペーターは第6学期でフリードリッヒ・フォン・ヴィーザー教授のゼミナールに参加することになった。カール・メンガーの後継者、ヴィーザー教授は1903年にプラハ大学からウィーン大学へ移り、メンガーの経済学講座を引き継いでいた。
フリードリッヒ・フォン・ヴィーザー(Friedrich von Wieser)は1851年にウィーンで生まれた。ウィーン大学法-国家学部で学び、のちにメンガーの『国民経済学原理』を読み、理論経済学研究の道を歩む。
今日の経済学教科書にヴィーザーの名前を見出すことはできないが、メンガーの限界効用理論に「限界効用」と名づけたのはヴィーザーであり、「機会費用」の概念を作ったのもヴィーザーだから、のちの新古典派ミクロ経済学に大きな足跡を残していることは間違いない。
シュンペーター
第6学期の履修科目は?
シュンペーターが第6学期に履修した科目は以下のとおりである(※注1)。
■1904年夏学期(第6学期)
『オーストリア相続法』
『オーストリア民法第2部』
『オーストリア商事訴訟法』
『微分・積分学基礎』★
『財政学、オーストリア財政法』★
『確率計算論』★
『保険数学』★
『オーストリア国家・法制史ゼミナール』
『国際法』
『行政学・オーストリア行政法』
『ゲルマン法演習』
『関税政策、オーストリア=ハンガリー税率表草案』★
『解析幾何学』★
『微分幾何学第1部』★
『財政学演習』★
『経済学演習』★
『刑法演習』
このうち、★が経済学関係の科目であり、『財政学、オーストリア財政法』と『経済学演習』がヴィーザーの担当であった。『経済学演習』では限界効用理論や機会費用や帰属理論など、研究成果をシュンペーターらに教えていたはずであるが、ゼミの内容まではよくわからない。