東京から車で2時間半
捕鯨基地に地元の人、観光客が集う

 調査捕鯨という奇妙な方法はともかく、沿岸小型捕鯨は現在も続けられている。沿岸小型捕鯨というのはIWCの管轄外の小型鯨類を対象とする捕鯨だ。北海道の網走と函館、宮城県の鮎川、和歌山県の太地、そして僕らが訪れた千葉県の和田の5地区に捕鯨基地がある。

 まず驚いたのは人の多さだった。

 東京から車で2時間半。アクアラインを通ったからか、東京からの連続性を強く感じる。国道128号線から海沿いの道に入りしばらく進むと、漁港の外れに建っている解体場が見えてくる。

 解体場は大きな東屋で、外から自由にクジラを解体する様子を見学することができる。解体開始の時刻が近づくにつれ、見学者の数は徐々に増えていく。一見したところ地元の人以外にも、子ども連れの行楽客が多い。

 解体開始の少し前に沖に係留されていたクジラがウインチで運ばれる。和田浦では捕ったクジラの腹を裂き、海中で16時間係留させる。内臓の匂いが肉にうつるのを防ぎ、死後硬直がとけるのを待つのだ。この工程を現地では熟成と呼んでいる。

 解体作業と平行して、東京海洋大学と東海大学の学生によって調査がおこなわれる。運ばれたクジラはまず体長を計測する。胃の内容物を調べたり、採った歯から年齢などのデータを収集している。

「見てみて、クジラだよ。大きいね」

 親御さんが子どもに語りかける声が聞こえた。子どもたちは目を輝かせて、陸に上がったクジラを見つめている。それは水族館で泳いでいる愛玩的な生き物ではない。このあたりに住む日本人が昔から食用としてきたツチクジラである。

 その日のお昼に「ぴーまん」というクジラ料理専門店に伺った。

変わった名前のクジラ料理店。何故に『ぴーまん』なのか。聞いた話では「(オープンした頃)『とまと』とかそういう洋風の名前が流行っていて、変わったところで『ぴーまん』と名づけた」らしい

 80種類ほどの種類のあるクジラだが、大きく分けるとハクジラとヒゲクジラのふたつに分類される。クジラ料理店で提供されてるのは、ほとんどがナガスクジラやミンククジラなどのヒゲクジラだ。

「食べて旨いのはヒゲクジラ。近海で穫れるハクジラは美味しくない」

 というのが定説で、ハクジラに分類されるツチクジラは旨くないと聞いていたし、実際食べて美味しいと思った経験がなかった。