今回ご紹介するのはリチャード・フロリダ著『クリエイティブ・クラスの世紀』です。デジタル化、グローバル化が進んだ現代では、どのような労働力が求められるのでしょうか。
今の時代に求められる労働力
「クリエイティブ・クラス」とは
原題は“The Flight of the Creative Class”、2005 年に米国で出版され、07年に邦訳が出版されました。経済学では「土地、資本、労働」を3大生産要素としています。企業は資本と労働力を投入し、生産高(Output)を得ます。ここからそれぞれの生産要素へ分配し、残りが利益となります。しかし、これは工業化時代の考え方であり、労働力の分類と計測法は変わるべきではないか、これがリチャード・フロリダ(1957-)の着眼点です。
こうした労働の分類については、1910年代から議論されてきました。古くはエミール・レーデラー(1882-1939)の「ホワイトカラー論」(1912)で、需要の側からみた中間層の誕生と成長を論じました。
一方、供給側からみた労働の分類では、ピーター・ドラッカー(1909-2005)の指摘が重要です。『断絶の時代――来たるべき知識社会の構想』(ダイヤモンド社、1969)でドラッカーは、初めて知識経済(ナレッジ・エコノミー)の到来を予測し、知識を基盤とする経済を支える人びとを知識労働者(ナレッジ・ワーカー)と名付けました。
リチャード・フロリダは総労働の中を分類し、クリエイティブ・クラスを国別に、そして定量的に抽出しました。クリエイティブ・クラスはドラッカーのナレッジ・ワーカーに近いですが、ドラッカーが60年代末に行なった予測を超え、グローバル化、デジタル化、ネット化が進行し、GDPに占める割合も大きく増加しているそうです。
工業化時代に必要な労働力と、グローバル化、ネット化が進んだ2000年以降では必要とされる労働力がまるで違うというわけです。
フロリダが定義したクリエイティブ・クラスとはどのようなものでしょう。
使っているデータは、世界中の労働統計を管理する国際労働機関(ILO)によるものだが、そこでは労働力を科学者、エンジニア、芸術家、音楽家、建築家、経営者、専門家などの職業別カテゴリーに分類し、かなり詳細な関連データを収集している。(略)ただし、「技能者」という分類の取り扱いが、国によってさまざまであることには注意が必要だ。このため、広義と狭義の二種類のクリエイティブ・クラスを測定している。広義のクリエイティブ・クラスは科学者、エンジニア、芸術家、文化創造者、経営者、専門家、技能者を含み、狭義の場合は技能者を含めない。(167-168ページ)