クリエイティブ・クラスの
ランキングが低いアメリカ

 先進国でクリエイティブ・クラスが増加しているのは、工業化時代から脱工業化時代へ移行し、生産のサプライ・チェーンは労働コストの低い国へ移しているからでしょう。たとえばアップルはアメリカの本社で企画、設計、販売していますが、製造は中国などです。

 フロリダは国別の統計を整理し、多様なランキングを作成しています。「グローバル・クリエイティブ・クラス(対労働力人口比)のランキングではこうなっています(ただし日本、中国、フランスはデータを得られていません)。

それと知られた国は、すでにアメリカより大きな値を示している。アメリカは狭義のクリエイティブ・クラスの割合では十一位にランクされ、広義のクリエイティブ・クラスだと三九ヵ国中三一位のランクとなる。(略)狭義のクリエイティブ・クラスが国内労働力人口の三〇パーセント以上を占める国は、三カ国ある。アイルランド(三四パーセント)、ベルギー(三〇パーセント)、オーストラリア(三〇パーセント)である。二五~三〇パーセントは、五ヵ国である。オランダ(二九・五パーセント)、ニュージーランド(二七パーセント)、エストニア(二六パーセント)、イギリス(二六パーセント)そしてカナダ(二五パーセント)だ。

 技能者を含む広義のクリエイティブ・クラスで四〇パーセント以上となるのは、九ヵ国である。オランダ(四七パーセント)、オーストラリア(四三パーセント)、スウェーデン、スイス、デンマーク、ノルウェー(以上、各四二パーセント)、ベルギー、フィンランド(以上、各四二パーセント)、ドイツ(四〇パーセント)である。二五パーセント以上四〇パーセント未満となると、二五ヵ国もある。(168-171ページ)

 大半は欧州の脱工業化諸国です。フロリダはデジタル化が進展を始めた2000年以降、次々に関連する著作を発表しています。原著の出版順に整理すると、以下のとおりです。

The Rise of the Creative Class: and How It's Transforming Work, Leisure, Community and Everyday Life (2002).
『クリエイティブ資本論――新たな経済階級の台頭』(井口典夫訳、ダイヤモンド社、2008年)

Cities and the Creative Class (2005).
『クリエイティブ都市経済論―地域活性化の条件』(小長谷一之訳、日本評論社、2010年).

The Flight of the Creative Class: the New Global Competition for Talent (2005).
『クリエイティブ・クラスの世紀――新時代の国、都市、人材の条件』(井口典夫訳、ダイヤモンド社、2007年)

Who's Your City ? How the Creative Economy Is Making Where to Live: The Most Important Decision of Your Life(2008)
『クリエイティブ都市論――創造性は居心地のよい場所を求める』(井口典夫訳、ダイヤモンド社、2009)

The Great Reset: How New Ways of Living and Working Drive Post-Crash Prosperity(2010)
『グレート・リセット――新しい経済と社会は大不況から生まれる』(仙名紀訳、早川書房、2011)

 本作はちょうど真ん中、リーマン・ショック前の出版です。彼の議論はクリエイティブ・クラスを世界から集める都市間競争へ重心を移していきます。