要支援者向けサービスは
介護保険制度外の方針へ

 今年6月に「地域医療・介護総合確保推進法」が成立し、それに伴う「医療」「介護」の大転換を取り上げてきた本連載。前回前々回では、介護保険の制度改革を検証してきた。今回は、最も批判を浴びているテーマを採りあげる。要介護が軽い「要支援」高齢者が利用する訪問介護と通所介護(デイサービス)だ。費用の削減を狙って、これまでの国の一律の制度を保険者の市町村に移すことになった。効率化という「大義」によって、介護保険法に基づく全国制度の一角が崩れたと言えるだろう。

 要支援1と2の人向けのサービスは、2006年度から介護予防サービスと位置づけた。「要介護状態にならないよう」に、介護予防のためのサービスとした。要介護1~5のサービス提供が出来高方式なのに対し、包括方式を導入し、結果として訪問介護は月8回に限られるなどサービスの切り詰めになった。

 出来高方式とは、利用したサービスの利用時間と回数を積み上げて利用料金を決めるやり方。これに対して包括方式とは、利用時間に関係なくサービスの種類によってあらかじめ利用料金が決められている方式を指す。これまで出来高方式で収入を得ていた事業者は、同じサービスを提供する際に、従来の利用回数以上だと収支が取れなくなるので、結局、時間や日数に制限を設けることになった。

 介護予防訪問介護の利用者は59万5000人。543万1000人の全利用者の11%を占め、介護予防デイサービスの利用者は60万8000人でやはり11%を占める。

 利用者だけを見ると相当の人数だが、利用する費用は少ない。元々報酬が少ないからだ。介護予防訪問介護の費用は964億円。介護予防デイサービスでは1531億円となっている。7兆6000億円の全費用に対する割合は、介護予防訪問介護で1.3%、介護予防デイサービスで2.0%に過ぎない。

 介護費用の削減効果は少ないが、「軽度者向けサービスをこれからは介護保険制度から外していく」という方針を打ち出したことが重要である。今回は、原資を介護保険に依存する仕組みを残すが、いずれ切り離されるだろう。

 サービスの種類も訪問介護とデイサービスだけだが、今後、他のサービスにも広がる可能性が高い。つまり、国の制度から市町村の独自制度に完全転換を目指す将来プランを現場に示唆することに意味がありそうだ。並行して、介護保険の対象者を中重度者に絞っていくことになる。