エビデンス・ベースド・デザインとは

 エビデンス・ベースド・デザインとは、信用性の高い根拠に基づいて建築の意思決定を下すデザインプロセスのことを指します。米国のThe Center for Health Designがエビデンス・ベースド・デザインを採用する組織の認定を行う機関で、そのホームページの情報によると、世界中で米国を中心に39社の会社が認定を受けています。ヨーロッパで認定を受けているのはアーキメッドの一社のみで、欧州におけるエビデンス・ベースド・デザインのパイオニア的な存在です。

 エビデンス・ベースド・デザインは、通常のデザインプロセスよりも、より幅広く根拠になるあらゆる情報を探して集めることに時間を費やし、それが常に正しい情報か慎重に吟味しながらデザインに役立てる手法だと、一連のプロセスを聞いて感じました。まずはこのプロセスはどのように始まるのか、ペニラさんに聞いてみました。

「通常、最初に行うのはクライアントが持っている情報を全て読む作業です。まずは彼らが問題を解決する上で必要な情報量を、どのくらい持っているのかを検査します。情報について何を理解しているのか、何がまだ欠けているのか見分けるのです。

 これついてはご存知ですね、でもこれも知っておくべきですよ、と伝えます。それから、クライアントと共同での創造プロセスが始まるのです。そもそも人は自分が知らないということさえも、わかっていないことについては、質問しませんから」

 理論物理学者のアルバート・アインシュタインは、「我々の直面する重要な問題は、それをつくったときと同じ考えのレベルで解決することはできない」と述べています。根本的に問題を解決するために、最初に問題を提議した人の知識を溯って調べることは先を読んだデザインをする上で重要なステップなのでしょう。

「私たちは、建築でアウトサイド・イン、インサイド・アウトという両方の考えで取り組んでいます。アウトサイド・インの方法が建築では伝統的な考え方です。ランドスケープやレイアウトがどうあるべきかを考えるのです。

 インサイド・アウトは、誰がそこに実際に住むのか、住人がどのような気分で建物の中を歩くべきなのか? プライベートな空間はどのように経験すべきか? 人類学者のようなアプローチで、住民の毎日の生活は一体どういうものか聞いたり観察をして、そこから設計するのです。

 しかし、インサイド・アウトだけでは、素晴らしくユニークな建築は出来ません。機能重視のものになってしまいます。身の回りの環境とそれ以上のスケールで建築の環境の間にストーリーを作ることが大切なのです。

 その過程で、常にエビデンス(根拠)を意識することが大切です。多くのアイディアは出てきますが、エビデンスを意識することで、例えば高齢者住宅で家感を出すことでこれは機能するアイディアだろうか、とフィルターをかける上で役に立つのです」

 とはいえ、せっかく考えたアイディアも根拠があるからと言われて取捨選択されるようではデザイナーの創造性が制限されるのではないかと思い、今度はアーキメッドの別のスタッフの方にもインタビューをお願いして詳しい現場事情を聞いてみました。