日本製造業のDNAを残す

 解体するかのように切り売りされていく三洋電機は、その白物事業が中国の大手家電メーカー・ハイアールに買収された。そこで売り出されたブランドはアクアという新しいものだ。家電量販店で、「アクアってなに?」と聞かれた消費者に対して、量販店の店員は「元は三洋電機ですから」と説明するそうだ。それで、「ああ、三洋なの。じゃあ大丈夫ですね」と消費者が納得する。

 こうした現象から、本書は鋭く時代の流れの変化を次のように読み取っている。

「日本の消費者は、身の周りの家電が、もはや『メード・イン・ジャパン』でなくなったことを知っている。メード・イン・ジャパンが消えゆく中で、消費者が判断のよりどころとするのは『メード・バイ・ジャパン』だ。作っている場所は中国でも、日本人が設計や生産に関わっているのなら安心だ。……だから、消費者は『元三洋』に安心感を覚えるのだろう」

 三洋電機をはじめ日本の家電メーカー全盛時代までの道のりが、日本製造業を日本企業が自ら形成していく時代だとすれば、いまは、日本製造業のDNAをいかに残せるかという新しい課題に直面する時代に変わった。日本人自身もその時代の変化に敏感に気づいている。

 元会長だった井植敏氏がタップダンスの教室の普及と玉ねぎの栽培に身を乗り出している。日本国内の他の企業や業種、さらにハイアールのように他国の企業で働く元三洋の社員も大勢いる。彼らは今やその日本製造業のDNAを多くの分野に、企業に、国々に残す作業に新しい人生の生きがいを見つけ出すように努力している。三洋電機の解体に多くを学びとれると思う一冊である。